オオサカジン

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Posted by オオサカジン運営事務局  at 

2009年02月25日

化石

        「お父さん!お父さん!」
        「どうした?」
        「これ・・・見つけた。」
        「ん・・・?これは・・・もしかして、化石・・・?」
        「うん。やっぱり、お父さんもそう思う?」
        「まさか・・・。よし、和夫、ちょっと調べるから待ってなさい。」
父は、書庫からいくつかの本を持ってきて調べ始めた。
僕の父は、恐竜が子供の頃から好きで家にもそういったモノが飾られている。
ポスタ、人形、通販で買ったそれこそ化石のレプリカなど。
        「やっぱり、そうだ!これは、ステゴサウルスの爪の化石だ。」
        「へぇぇ・・・。」
        「う~ん・・・北アメリカにしかいなかったと出ているが、まさか・・・和夫、どこで見つけたんだ?」
        「裏山。」
        「これは大発見だ。日本にも、大阪にもステゴサウルスが住んでいたんだ。」
        「・・・で?」
        「・・・で、って・・・大発見やないか。」
父の興奮し、電話をし始めた。
どうやら父の友達である恐竜の化石について研究している大学の先生と話しているようだ。
        「よし、もっと大きな化石が出てくるかもしれん。今からそこへ案内しなさい。」
        「え?・・・う、うん・・・。」

実はこの化石、僕が粘土で数日前に作ってカラカラに乾かしたヤツで本当の化石ではない。

どうしよう。まさか、こんな簡単に騙されるとは思わなかった。

        「見て下さい。教授、この化石。」
裏山へ向かう途中、大学の教授と合流した。
        「・・・間違いない。ま、まさか・・・あり得ん。」
        「大発見でしょ?教授。」
        「うむ・・・。信じられん。」
        「あの・・・ちょっと・・・お父さん、聞いて。」
        「和夫、後にしなさい。」
        「・・・・。」
        「和夫くんって言ったかな?このステゴサウルスはね、ジュラ紀に生息していた、今から1億5600万年前に生息していたと言われるスゴイ恐竜なんだよ。」
        「・・・可哀そうに。」
        「え?」
        「この恐竜、お父さんとお母さんに捨てられたんだね。」
        「・・・和夫くん、恐竜の世界にもちゃんと親子、仲良く暮らしていたんだよ。」

ボケがスルーされた。と、言う事は・・・このアホの大人ふたりが完全にマジになってると、言う事だ。
もはや冗談が通用しない空気となってしまっている。

        「この地層から出てきたのか・・・。この地層なら出てもおかしくない。」
父と教授は丁寧に調べ地層に手をやり、掘り始めた。

        「おい、和夫、何をやってるんだ。お前も手伝いなさい。」
        「え・・・あのね、お父さん。」
        「話なら後で聞く。早くお前も掘るんだ。もっと証拠を集めて、発表すれば日本中、いや、世界中が大騒ぎするんだぞ。」
        「で、出る訳ないよ。」
        「和夫、良く聞きなさい。」
        「は、はい。」
        「大金持ちになりたくないんか。」
やらしい台詞を僕に向けたそのスグあと、モクモクとまた掘り始めた。

        「・・・お父さん。」
        「なんだ!」
        「ちょ、ちょっと聞いてよ。」
        「後で聞く。って、言ってるだろ。」
父はもう夢中になって耳を貸そうとしない。
        「・・・アカン。目が$マークになってる。」

        「なんでそんなに恐竜の爪が欲しいの?」
        「爪が欲しいんじゃない。恐竜の爪跡が欲しいんだ。」

        「・・・。」

再び、父は作業を進めた。

こうなればヤケクソや。と、適当に掘り始めた。

20分位経っただろうか。
コツン!と、音がしたので土を掘りわけていくと、骨が出てきた。

        「お父さん!」
        「どうした?」
        「ほ、骨!」
        「どうした、和夫くん。」
        「骨が出て来たよ。」
        「でかしたぞ!お前はなんて運の強い子なんだ。」
        「どれどれ・・・。」

手に取り、教授はその骨を眺めた。

        「残念ながら、これは人の骨だな。」
        「なんだ、そうか・・・。」

        「この骨、まだ1週間も経っていないな。」
        「化石でもなんでもないのか。」

教授はその骨を地面に置き、父と教授はまた作業を再開した。

・・・。
・・・。
・・・?


「人の骨?1週間?」


・・・。
・・・。
・・・?
・・・え?



・・・ここ、もしかして殺人現場???

        「お父さん、帰ろうよ!ねぇ!」
        「もうちょっと頑張りなさい。」
        「違うんだって!」
        「和夫くん、疲れたのなら休んでいていいよ。」
        「帰ろうよ~!」
        「帰りたいんなら、1人で帰りなさい!」

え~い・・・こうなったら・・・

        「実は、このステゴサウルスの化石、粘土で作った偽物なんだよ!」

僕の声が山にこだました。

        「・・・。」

        「・・・。」

        「休み時間に僕が作ったんだよ、この化石。」





1週間後。

教授は再度、調査に裏山へ出かけた。

        「しかし・・・この地層なら何か化石が出てもおかしくは無いんだが・・・。」

教授は諦めきれないのだろうか、また、慎重に掘り始めた。

しばらく掘り進めると手応えを感じた。

コツン!

        「ん?」

        「なんだ、また、人の骨か・・・。」

教授はそのまま掘り進めた。




!!




        「・・・和夫くん。」
  
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2009年02月16日

命、尊し。

私は中華料理店を経営している。

オフィス街に近い処で店を出しているせいか、14時過ぎまではお陰さまで・・・って感じである。
今日もようやくピークタイムが過ぎ、一段落のできる時間となった。
一端店を閉め、夕刻からの開店準備の為、休憩後に仕込みに移る、いつもの流れだ。
その時、ガラガラガラ・・・と、扉が開いた。
あ・・・まだ、暖簾、出したまんまやった。
お客様がいらっしゃれば、勿論、応えるのが我々の仕事である。
     「いらっしゃいまっせ。」
     「豚骨ちょうだい。」
男は、ササッっとカウンターに座った。
     「はい、ありがとうございます。」
チャッチャッっと、いつもの手際で麺を茹でる。
スープを椀に注ぎ、チャーシューを乗せ・・・
     「お待たせ致しました。」
     「お。旨そうやな。」
麺を啜る音とお客様に笑顔を見るだけで幸せな気分となれる。
私は、暖簾をしまいに表に出た。
その時、悲鳴が聞こえてきた。
     「なんじゃ、こりゃぁ~!」
ガランガランと暖簾を落とし、振り返るとお客様が私の方を睨んだ。
     「ゴキブリが入ってるやんけ!」
一瞬にして血の気が引き、顔色が変わっていくのが解った。
こんな事があっていいのだろうか?
陳腐な漫画やドラマの世界だけだと思っていたのだが・・・。
     「も、申し訳ございません!」
     「何をやっとんねん!」
     「は、はい、スグに代わりの・・・」
     「は、早く!・・・早く出せ!
     「は、はい。」
     「浮き輪!」
     「・・・浮き輪!」
     「・・・・え?」
     「浮き輪や!」
     「は、はい?」
     「溺れてしまうやろ!」
     「え?ゴキブリが・・・です・・・か?」
男は、鞄から双眼鏡を出してお椀を覗いている。
     「今、助けてやるからな!」
私にはさっぱり状況が飲み込む事が出来なかった。
男は一回、双眼鏡を置いて、私に怒鳴りつける。
     「早くしろ!」
新手の嫌がらせなのだろうか?
     「もぅちょっとの我慢やからな!おい!お前、跳び込め。」
     「は、はぁ?」
     「俺、カナヅチやねん。今は、お前に頼るしかないやんけ。」
     「え?・・・え~~~~と。」
この人は一体・・・?
ノイローゼ?
病気?
何?
男はまた双眼鏡を手に取り、覗いた。
     「ウギャッ!!ゴキブリのアップ!」
     「あ・・・あの・・・。」
     「なんや!」
     「・・・・双眼鏡、逆ですよ。」
     「あ、あぁ。」
このおっさん、ほんまどないなっとんねん?
     「おい、何をボサッ!っとしとんねん!」
     「あの・・・お客様?」
     「もうええ!俺が行く!」
男はそっと割り箸をスープに付けた。
     「これに掴まれ!」
ゴキブリは箸に掴まり、外に救出された。
     「こういう時は、・・・おい!」
     「は、はぁ?」
     「人工呼吸できるか?」
     「え?ゴキブリとですか?」
     「そうや!」
     「い、いや・・・あの・・・それは、ちょっと・・・。」
     「役に立たん男やで。死んでしまってもエエんか?」
     「いっその事、死んで貰えると、うちとしましては・・・。」
     「お前、生き物の命をなんやと思ってるねん。」
     「じゃ、じゃあ、あなた出来るんですか?」
     「今は出来るとか出来へんとかいう話してへんやろ!命の尊さの話をしとんねん。こいつもな、この世に生を受けて、地道に一生懸命、地を這って生きてるねん。何を簡単に命を奪おうとしてるねん!」
     「は、はぁ?」
     「さっきからそうや。お前、こいつに恨みでもあんのか?何でもそうや!何でも見た目だけで判断して!だから、イジメが無くならへんねん!」
     「それとこれとは次元が違うじゃないですか。」
     「こいつが絶世の美女やったとしたら助けるやろ!」
     「え、えぇ・・・まぁ・・・ど、どうでしょ?」
     「お前はこいつに死んで欲しいんか?殺人鬼!」
     「いや、でもね、うち飲食店ですし・・・。」
     「飲食店?お前、こいつ殺して調理するつもりなんか?」
     「あのね、落ち着いて。」
     「だから、さっきも助けんと見殺しにしてたんやな。」
     「調理なんかする訳ないでしょ。」
     「『人の命は地球よりも重い』って、1977年日航機ハイジャック事件の時、福田首相も言ってたのん、知らんのか?」
     「・・・全然。・・・それ、ゴキブリやし。」
     「だから、差別すんな!言うてるんのんが解らんのか!命の尊さを教えたる。」
     「あの・・・お代も結構ですから。帰って下さい。」
     「何を茶濁してるねん。ま、聞け!命とはな皆平等やって教祖さまも・・・。」
あ・・・この人、宗教団体の人。
     「人間も動物も虫も草花も全て生きてるねん。その命を奪う権利が誰にあるというのですか?誰も殺してはいけないんです。」
     「・・・豚骨頼んだクセに。」
     「え?」
     「それ、豚を殺して作ったスープですけど。」
     「それは、それや。食物連鎖の一環や。俺が言いたいのはそういう事じゃなくて、豚は既にお亡くなりになられていた訳で殺された訳ではない。自然死されて他の生物の為に、我々に分け与えて下さったものや。」
     「無茶苦茶や。」
     「だから、命を無駄にしたらアカン!言うてるねん。」
     「・・・ほな、エエんか?」
     「何が?」
     「そのゴキブリ、ピクピクして死にかけとんで。」
     「まさに、虫の息。・・・やかましわ。」
     「ボサッ!っとしとれんと救急用具持って来くされ!」
     「・・・。」
     「早よ!・・・あ、あぁ!」
     「え?」
     「死んだ。」
チーン♪
     「お前がトロトロしてるさかい、死んでしまったやないか!今、ここに尊い命が亡くなってしまったんやぞ!」
     「そんな・・・大袈裟な・・・。」
男は、泣き崩れた。
     「・・・・カラアゲ。」
     「は?」
     「カラアゲにしてくれ。」
     「食べるんですか?」
     「そや。」
     「これを?」
     「人の話、聞いてへんかったんか。食物連鎖や。自然死されて他の生物の為に、我々に分け与えて下さるんや。こいつの命を無駄にするな!」
     「いや・・・それは、ちょっと・・・。」
     「まだ、解らんみたいやな。」
     「でもね、衛生上ね、飲食店なんですよ。ここ。」
     「だから、食べるって、言うてんねんやないか。」
     「警察呼びますよ。」
     「解らん奴っちゃなぁ~。もう一回、言うたる。ええか、人間も動物も虫も草花も全て生きてるねん。その命、ひとつひとつ大事にしていかなアカンねん。生きてる者全てが平等で誰もが命を奪う権利無いねん。」
     「・・・何、言うてもアカン。」
プ~~~~ン・・・・ピシャッ!
     「あ。」
     「おい、聞いてるんか?」
男は、頬をボリボリ掻きながら喋り続けた。
     「おたく、・・・蚊は殺してもエエんか?」
     「ん?」
     「説得力あらへん男やな・・・。」
     「え?蚊?・・・あ。」
     「おい、蚊は別やなんて言わせへんぞ。」
     「い、いや・・・その・・・あの・・・。」
     「命は誰も奪う権利無い。言うたな、お前。」
     「え、えぇ、まぁ・・・。」
     「どうするねん。ほんまは始めからイチャモン付けるんが目当てやったんやろ。」
ワァ~~~ッ・・・男は、その場に泣き崩れた。
     「待っとれ。スグ、警察呼ぶから。」
     「堪忍や。堪忍や。・・・エライ事してしまったわ~。」
     「解ったら、今回だけ見逃したるから二度とするんやないで。」
     「俺、生き物の命、奪ってもうたぁ~。」
     「こいつ、マジやったんか?」
     「死んでお詫び致します。」
     「え?」
     「ちょ、ちょっと待って。」
     「止めないで下さい。せめてもの償いを・・・。」
     「アカン。このおっさん、ホンマ、アカン。お手上げや。」
     「すいませんでしたぁ~~。」
     「・・・あ~ぁ・・・こんな事になるんやったら早く暖簾しまっておいたら良かった。」
     「すいませんでしたぁ~~~!」
     「・・・。」
     「あの・・・こういうノリはどうですか?」
男はケロッっとした顔で私を見ながら言った。
     「・・・のれん。」
  
Posted by ながいまる  at 02:05Comments(0)

2009年02月15日

床屋の主人

今朝、私は寝坊をしてしまい会社に急いでいた。
急いでいたせいか、髪もバサバサで髭も伸びきっていた。
大事な取引先の商談をまとめなければならない大事な日だっていうのに。
私は、携帯電話を取り出し会社に寄らず、直接、商談先の会社へ向かう旨を連絡した。
そのお陰で少しの時間の猶予が出来たので、身なりを整えようと偶然見つけた床屋へ入った。
幼少の頃近所にあった少し今の時代から取り残された感のある、その店。
店内には主人が煙草の煙を吐き出しながら新聞を広げ客を待っていた。
     「短くしてくれないかな?」
     「解りました。」
主人は手慣れた手つきで作業を始めた。
いかにもベテランという空気がまた昭和の臭いを感じた。
ラジオから流れる演歌もそれに輪をかける。
     「景気はどうですか?」
     「・・・関係ないでしょ、あなたには。」
無愛想な返事が返ってきた。
触れてはいけない部分だったのだろうか。
確かに今の若い男たちは皆、床屋や散髪屋という単語が通用しないと聞く。
きっと、客足もそちらに流れて行ってしまってるからだろう。
かく言う私も普段は美容室を利用している。
しかし、この雰囲気は懐かしくて私は嫌いじゃない。
沈黙のまま作業が進められていく。
この沈黙の空気が怖かった。
相手はハサミを持っている。
カミソリもある。
凶器が狂気となったら命はない。
大人しくしていよう。
主人が口を開いた。
     「あなたも普段は美容室派ですか?」
ドキッ!とした。
独身術でもあるのか?
     「え・・・えぇ・・・ま、まぁ・・・。」
     「実際、不景気でねぇ・・・床屋はお嫌いですか?」
     「いやいや嫌いじゃないですよ。近所に無いもんで。美容室を利用する事が増えましてね。実際、床屋に入るのは10年ぶり位なんですよ。ハハハ・・・。」
     「・・・そうですか。」
沈黙がまた続く。
     「今の若い人ときたら、床屋って言ったら「床を売ってる店」だと思ってやがる。」
     「・・・そんな奴いてるんですか?」
     「私はね、最近の言葉を知らない若者が増えすぎて腹が立っとるんですわ。」
     「は、はぁ・・・。」
     「今の若い者の言葉の知らなさと言ったら・・・。」
     「ま、私も営業してますんで相手の言葉使い気になっとりますがね。」
主人がブツブツ言いながら手を動かしている。
私的には客に向かってグチを言う主人の態度の方が問題あると思う。
     「なんで、床を売るから床屋やねん。」
     「ま、まぁ・・・イイじゃないですか。」
主人がイライラしてるのが解った。
持つハサミのスピードがじょじょに速くなって行く。
     「じゃ、『八百屋』は、「ヤオ」を売ってるのかね?」
     「は、はぁ?」
     「売り切れたら、「八尾」は無くなるのかね?」
     「な、何を言ってるんすか?」
     「『照れ屋』はどうしたらイイんだね?」
     「危ない!危ないですよ!御主人!」
     「君も思わないかね?」
     「あの・・・じゃあ、なんで床屋って言うんですか?」
     「え?教えて欲しいのかね?」
     「あ!知らないんでしょ。」
     「ん・・・君さえ良ければ教えてやってもイイが・・・。」
主人はそっとハサミを置いた。
     「じゃ、君、こっちへ来なさい。」
     「え?」
私は奥の部屋へ案内された。
その部屋は薄暗く、ほんの少しの電灯の光のみが射し込んでいた。
主人の態度が先ほどとは違い、私の耳元で囁いた。
     「わし、「床上手」やねん。」

それも意味ちゃう。

と、ツッコミを入れようと思ったが、その瞬間、それは逆となった。
  
Posted by ながいまる  at 01:47Comments(0)

2009年01月19日

理髪店

始めて入る理髪店。

扉を開けるとなんとも鮮やかでカラフルな色彩を演出している店内。

普通、理髪店というと演歌がかかっているかラジオだろう。

この理髪店では私の解らない、じぇいぽっぷ。と、いうのですか?
なんか若い人たちが好んで聴く曲が店内を包んでいた。

これまでにおじさんが生き慣れた理髪店とは少し遠い雰囲気だ。

私の同年齢とでもいうのでしょうか?
おじさんなんていない。

理髪店だというのに若い男性が5、6人順番待ちしていた。

こういう年齢の若い男性は美容室へ通うのが通例と思っていたのだが、理髪店にも若いお客様を・・・という考えの元なのだろう。

店員さんはどんな感じなのだろうか?
やはり、若いのだろうか?

そっと見てみた。

私と同じ世代のおじさんが若い子たちの頭を刈っていた。

なぜ、そんなに若い人たちに支持されているのだろう?

疑問に思った。

店を変えようと思ったが、その謎に興味を持って行かれた。

一人の少年が終わった。
ヘアースタイルを見てみたが、至ってそんな特別な感じは見受けれない。

しかし、嬉しそうな顔をして店を後にする。

中には店内の奥へ上がって行く客の姿もあった。

なぜだ?
何がそんなに魅力があるというのだ?
人気の秘密とは?

私の番が回って来た。

腰をかけて、注文をしサクサクと頭を刈って行く。

普通の理髪店と同じ光景。

特に変わった処なんて感じられない。

右頭部を刈る為に右に回り込み刈って行く。

ぷに。

柔らかい何かが私の頬にぶつかった。

ぷにゅ。

更に強く。

ぷにゅん。

え?男性器?

ちょっと顔をずらすと「危ないので動かないで下さいね~。」

多分、偶然だろう。
そんな事もある。

逆側に回って来た。

また、押しつけてきた。

ガチン!

勃ってるやないか!

人気の秘密が解った。
  
Posted by ながいまる  at 00:00Comments(0)

2009年01月16日

車内にて

久々に早く仕事を早く終わらせ会社を後にした。
私は自分で言うのもなんだが、エリート社員だ。
業績も他の先輩や同期、後輩よりもグンを抜いてトップだ。
出世コースを歩んでいるといっても過言ではない。
無論、社内の女性からも一目を置かれている。
だが、あまり寄っては来ない。
どうやら、違う次元の人間?声を掛けにくいみたいだ。
これが、私の悩みの一つでもある。
勿論、私から話しかけに行く事もあるが、ハニカんでしまってあまり会話が弾まない。
出会いはあるのに出会いがない。
まぁ、社内結婚は考えてはいないが、現状、少し寂しいもんだ。
そろそろ30代に突入するのだから、彼女の一人位は欲しいのが本音である。

これから出会いを求めて街へ遊びに行こう。
こんなに早く仕事を終えたのも久々なのだから。

私はホームで電車を待っていた。
さぁ、どこへ行こう。
どんな出会いがあるのだろう?
今日は何か出会いがある様な予感がする。

電車の扉が開き、車内を見渡し席を探した。
席が丁度ひとつだけ空いていたので、そこへ腰をかけた。

読書をしようと思い、本を鞄から取り出しページをめくった。

目の前で小学生が3人、キャッ!キャッ!している。

活字が入って来ない。
注意してやろうと思ったが、大人気ない気もしたので止めた。

私の席の隣から寝イビキが聞こえていた。
女性が熟睡している。

うるさい。
活字が入って来ない。

電車がガクン!と揺れた。
カーブに入ったのだろう。

小学生が女性の胸にガッ!っといったが、起きなかった。

よっぽど疲れているのだろうか?
熟睡というより、爆睡。

小学生の声が先ほどより大きくなった。
乳を触った。触ってない。の討論を展開している。

私は本を閉じた。
注意してやろう。と、思ったその時、女性が私にもたれてきた。

ほんの甘い香りが鼻をくすぐる。
怒りがスッ・・・と引いて行った。
それだけで良い気分になってしまうのは男の哀しい性とでも言うべきだろうか・・・?

これも一つの出会いなのかも解らない。

すると、いきなり女性がガバッ!と起きた。

目と目があった。

「臭ッ!」

一言だけ残し、違う車両に移って行った。

え?

仕事が出来ても女性が近寄って来ない理由が解った。

今日は早く家に帰って、シャワーを浴びよう。
  
Posted by ながいまる  at 00:00Comments(0)

2009年01月01日

ケシゴム

     「この消しゴム、良く消えるね。」
     「えぇやろぉ~!こんなんクラスのみんな誰も持ってないで。」
     「なんぼしたん?」
     「売ってへんよ。うちのパパが作ってん。」
豊と健治は幼友達の小学4年生。
健治の親父さんは街の発明家でもちょっとした有名人だ。
これまでも色々な発明をしてきて特許もいくつか取っているらしい。
その発明品のひとつを勝手に持ち出して来たのだ。
     「いいあなぁ~!いいなぁ~!欲しいなぁ~。」
     「見て!ボールペンで書いた文字も・・・。」
     「おぉ~っ!」
     「油性で書いた文字も・・・。」
     「おぉ~っ!」
     「修正ペンいらず!」
     「すごいな。ちょっと貸してや。」
     「えぇ~!でもなぁ・・・。」
豊は健治の消しゴムを奪って逃げた。
     「ちょ、ちょぉ~。」
     「エエやんか。」
廊下に逃げる豊の後を健治は追いかけた。
     「返せやぁ~!危ないねんから。」
     「何が危ないねん。」
その時、授業の始まりを告げる音が校内に鳴り響いた。
廊下を走り回るふたりの前に担任の先生が立ちはだかった。
     「こら!チャイムが聞こえへんかったんか?席に座りなさい。」
     「はぁ~い。」
豊はニッ。と笑い、健治はシブシブ席に着いた。
     「これより抜き打ちテストを始める。」
教室内、大ブーイングが起こり間もなく算数のテストの用紙が配られた。
     「よし、始め。」
周りの鉛筆の書きすすめる音が聞こえてくる中、豊の鉛筆は少しも進まない。
     「どうせなら何でも答えてくれる鉛筆を発明してくれよ。」
ボソッ。っと呟きながら計算を解く。
算数は嫌いではない。
ただ、人一倍時間がかかる。
特に文章題なんて問題を把握してそれから答えを導くのに時間がかかる。
     「あ、間違えた。」
豊は健治の消しゴムを使ってみることにした。
     「え!えぇ?」
答えと一緒に問題も消えた。
     「な、なんじゃぁ~?」
問題が解らなくては解きようもない。
チラッっと教室の時計を見た。
あと40分もある。
消えた問題をゆっくり思い出して鉛筆を走らせたが、無情にも時間は迫ってくる。
あと10分、あと5分・・・。
一問も問題が解けていない。
次の問題にも手を付けたがそれも書いては消してを繰り返しているうちにそれすらも問題が解らなくなっていたのだ。
焦りながら健治の方を見た。
左斜めに座っている彼の顔はとっくに答えを埋め余裕の表情を浮かべていた。
まだ一問も解けていない事とこの消しゴムに対して、その顔に苛立ちを感じた。
     「なんやねん。健治の奴・・・お前なんか、知るか。」
その思いからとっさに消しゴムを健治に投げつけバレないようにサッっと答案用紙に顔を伏せた。
左斜め後ろから当たった音と健治の「イタッ!」という声が聞こえた。
     「ヘッ。命中したみたいやな。ざま~みろ。」
パンッ!と担任の先生が手を叩きテストは終了した。
     「健治の奴、どんな顔してるやろ?」
豊は左斜め後ろの健治へ目を向けた。
     「あれ?いない?」
便所かな?
試験が早く解けたもんやから便所にでも行ったのだろう。
     「ま、いいや。」
次の時間、健治は授業に現れなかった。
     「あれ?体の調子でも崩したんかな?」
保健室にでも行ってるのだろうと、その次の休み時間に豊は向かった。
もしかしたら投げた消しゴムが目に当たって治療しているのかも解らない。
保健室には健治の姿は無かった。
早退するほど体の調子が悪かったのか?
それとも消しゴムの当たり処が悪かって病院にでも行ったのだろうか?
豊に不安の念が襲い、職員室へ担任の先生を訪ねた。
     「健治?」
     「はい。」
     「・・・誰?それ?」
担任の先生は健治という生徒の存在を完全否定した。
首を傾げ教室に戻り、健治の席へ行くとあの消しゴムが床に転がっていた。
     「健治・・・。」
健治はどこへ行ってしまったのだろう。
豊は放課後、健治の家へ行ってみることにした。
いつものように豊のインターフォンに指をかけ、音を鳴らした。
健治のお母さんが扉を開けてくれた。
     「どちら様?」
     「あ、あの・・・健治君いますか?」
     「健治?家をお間違えではありませんか?」
     「え?おばさん?」
     「見慣れない坊やね。うちには健治とおいう子はいませんけど。」
バタン!と虚しい音が豊の心をも閉ざされた。
どういう事なんだろう?
頭の中が真っ白になった。
健治が存在しない?
そんな訳ない。
この消しゴムが何よりの証拠だ。
今日起こった事を思い返してみよう。
健治のお母さんが時折カーテンの脇から見てるのが解った。
その場に立ち尽くして2時間の時が過ぎた。
扉がゆっくり開いた。
     「豊くんだね?」
眼鏡をあげながら白衣を着た長い白髪おじさんが近づいてきた。
スグに解った。
健治のお父さんだ。
     「君、例の消しゴムを持っているだろう。出しなさい。」
なぜ、持っている事が解ったのだろう?
ゆっくりとその消しゴムを手渡した。
     「やっぱり、そうか。」
どういう事だ?
     「健治にこの消しゴムを投げ付けなかったか?」
え?親父さんには健治の存在の記憶がある。
     「私のコンピューターに反応があったから気付いたものの。」
話の内容を要約すると健治の存在すら消してしまったようだ。
     「なんとかならないんですか?」
     「研究中だからね・・・なんとも解らないが・・・。」
健治の父親に連れられて、研究所に入った。
静かな研究室に所狭しと発明品が置かれてあった。
     「なんですか?これ?」
     「勝手に触ってはいかん!」
     「すいません。」
     「危険な物も多くて発表の出来ない物も沢山ある。」
     「はぁ。」
     「ま、ほとんどが試作品で未完成の物ばかりだがな。」
健治の父親が大きな紙と分厚い本を広げた。
     「これが設計図と取扱い説明書なんだが・・・。」
そんなもん見せられても何の事やらさっぱり解らない。
     「いいか、どんな物でも調べないで適当に扱ったらとんでもない結末を迎える事になるんだ。よく覚えておきなさい。」
     「は、はぁ・・・。」
     「この図面がなんだか解るかね?」
解る訳がない。
     「解らなくても見なさい。君には責任がある。人ひとりの存在を消してしまったのだから。あの消しゴムによってね。」
けたたましいサイレンがコンピューターから響いてきた。
     「健治の存在はこのコンピュターだけが知っているんだ。」
     「え?じゃ、健治は助かるんですか?」
     「あぁ、まだ、完全に助かるかどうかは解らないが、データーがここに残っている以上は可能性はある。」
カチャカチャとキーボードを叩き始めた。
     「バックアップデーターがこの消しゴムに保存されるようになっている。それをこのコンピューターにおとせば良いのだ。」
     「なるほど!・・・よく解んないけど。」
消しゴムをコンピュータに接続された。
     「あ。」
     「どうしたんですか?」
     「バックアップデーター、この消しゴムが消してしまってる。」
     「はぁ?」
     「流石、なんでも消してしまう消しゴム。」
     「バカですか?」
     「誰がバカだ。私は天才だ。」
     「まだ、他にも方法がある。」
     「だったら、早く何とかして下さい。」
     「この消しゴムの中身にも復元装置がある。消しゴムを開けてそれを引っ張り出して接続すれば・・・。」
その時だ。
ドーン!と音がしたと同時に目の前が赤く染まった。
コンピューターから火が噴いたのだ。
     「負荷がかかり過ぎたようだ。」
赤かった景色が次は黒く染まった。
     「に、逃げましょう。」
     「君ひとりで逃げたまえ!私は私の息子を助けるまでは逃げる訳にはいかん!」
     「でも僕たちも焼け死んでしまいますよ。」
あっと言う間に取り囲まれ、逃げ場を失ってしまった。
     「取り敢えず、このヘルメットを被りたまえ。」
     「ど、どれ?」
     「そこに黄色のヘルメットがあるだろ。」
     「ちっくしょう!駄目か!」
ガラガラ・・・と天井が砕ける音と共に色んな物が降って来た。
黄色いヘルメットを被っていたお陰でなんとか無事だ。
     「そこに持ち看板の屑があるだろ。その下に隠れてなさい。」
一生懸命火の元を抑えようと必死になっている姿が目に焼きついた。
そうだ!なんでも消す事にできる消しゴム。
消しゴムを火に投げた。
     「なんて事をするんだ。」
火と煙がたちまち消えていった。
何事も無かった様に辺りは静けさを取り戻した。
黒焦げになった消しゴムが床に転がった。
     「た、助かった。」
     「なんて事を・・・。」
     「でも、このお陰で助かったんじゃないですか。」
     「息子の・・・息子の健治はどうなる!」
     「え?」
     「復元装置もパァ・・・。だ。」
     「・・・。」
     「君に亡くした父親の気持ちなんてわからないよ。」
うずくまって泣いている父親の姿に自然と涙がこぼれでた。
     「す、すいませんでした。」
豊はわんわんと泣きじゃくった。
自分のしたちょっとした悪戯で大きな事件を巻き起こした事に。
そして尊い命が失われた事に。
ゆっくりと健治の父親は立ちあがった。
     「これを使おう。」
赤いボタンが真ん中に付いている四角い箱。
     「なんですか?これ?」
     「研究中の発明だ。」
     「これで健治が助かるんですか?」
     「あぁ、成功すればの話だが・・・。」
     「これで全てが解決するんだったら・・・。」
     「これはね、世紀の大発明と言って良いだろう。」
     「はい。」
     「リセットボタンだ。」
     「リ、リセットボタン・・・。」
     「そう、やり直す事が出来るんだ。」
この男は天才だと思った。
     「なんでもっと早く出してくれないんですか?」
     「いや、まだ、研究中だったから。」
     「・・・。」
     「しかし、今、それが試されようとしている。」
     「はい!」
     「希望は捨ててはいけないんだ。」
赤いボタンに指をそっと置いた。
     「それでは押すぞ。」
     「はい。」
     「これで万事解決だ。」
赤いボタンを押した。
プツッ。

ドーン!

ビックバーンが起こり、地上の山という山が爆発。
その煙でもうもうと雨雲が出来、やがて、それが雨となった。
その雨が海となり、そして生命が誕生していく。

何千年、何万年。

ボタンを押した瞬間、これまでの地球上のあらゆる全てが無となり再び始まったのだ。

新たな喜劇と悲劇の生物の歴史。

神の声が豊の耳に届いた。
     「呪文を唱えなさい。」
     「呪文?」
     「そう、呪文です。」
豊は大きな声で叫んだ。
     「ドッキリ、大成功!」
豊は黄色いヘルメットと持ち看板を持っていたせいで助かっていたのだ。
呪文を叫んだ瞬間、辺りは教室のあの風景に戻った。

と、いう小説を書いたのを健治に見せた。

今、健治はこの小説を消しゴムで一生懸命消している。
  
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2008年12月24日

リボン

男なら一度は夢見た事があるだろう。
クリスマスに全裸にリボンを巻いて、自分自身をプレゼントする女性の姿。
     「私をア・ゲ・ル。」
     「私をタ・ベ・テ。」
男妄想あるある。
夢物語である。
くだらない。
ある訳がない。ある訳が・・・。
私は34歳、独身の男。
彼女を失ったのなんて遠い過去の事だ。
12月24日の夜のことであった。
会社から家路についた。
     「あれ?カギが開いている?」
     「おかえり~!」
     「え?」
目の前にリボンに身を包んでいる人間が立っていた。
     「だ、誰?」
     「私よ。ワ、タ、シ。驚かそうと思って・・・。」
     「誰?」
そう、リボンは顔面にも巻かれていたので、誰だかさっぱり解らない。
     「声で解らない?私よ。」
口も塞がれてるので声がこもってしまっていて、まるで相撲取り。
解る訳がない。
     「だ、誰?」
     「いいから。リボンをほどいて。」
     「待て!なぜ、俺の部屋にいる?どうやって入った?」
     「今日、何の日か知ってる?」
     「ク、クリスマス。」
     「ね。解った?」
     「・・・解らん。」
     「鈍感な人。でも、そんなところが、ス・キ。」
     「はぁ~?だ、誰なんだ?」
     「ど、どろぼう?」
     「こんな可愛いどろぼうさんが居るもんですか。」
     「いや、顔、解らんから。」
     「ほら、早くぅ~。」
     「とりあえず、顔を見せろ。」
     「顔よりも、こっちの方が見たいんじゃないの?」
上半身、胸の辺りのリボンがスルスル・・・とほどけていった。
手で目を覆ったが、男の本能とでもいうのだろうか少しずつ指と指に隙間を作った。
目の前にはリボンがほどけた、女性の裸体が・・・。
     「え?無い。無いがな。」
     「アラ、失礼ね。確かにある方じゃないけど・・・。
それは、女性にはタブーなセリフよ。」
何なんだ?
訳が解らない。
整理してみよう。
仕事から帰ったら、玄関のカギが開いていた。
すると、リボンで巻かれている女性がいた。
スキ。言われた。
胸の辺りのリボンがほどかれた。
しかし、期待していたものが無い。
何なんだ?
整理してみても解らない。
     「イイから、ほどいて。」
     「・・・解った。」
唾を飲み込んでいる自分が解った。
ソッっと、リボンに手をかけ一斉にほどいた。
シュルルルル~ッ!
パサッ。
リボンが床に落ちた。
目の前には、誰もいない。

夢物語である。
くだらない。
ある訳がない。ある訳が・・・。
私は34歳、独身の男。
彼女を失ったのなんて遠い過去の事だ。
12月24日の夜のことであった。
10年前の今日。

リボンが似合う可愛い女性だった。



そう、今日は里香の命日。



メリークリスマス。
  
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2008年12月17日

拾いもの


     「あ・・・。」
廣井英明17歳、高校へ向かう朝の通学路にて。
住宅街と道路脇の片隅に財布がひとつ転がっていた。
     「誰のだろう?」
3~4へん辺りを見渡してみたが誰もいない。
革で出来た茶色い財布。
持ち主はきっと大人だろう。
     「お~い!」
声の方へ首をやると道路の向こうで同級生の青山が手を振っている。
パッ!っと拾いあげ、信号を待って青山の方へ走って行った。
その日は特に風の冷たいいつもの日常。
     「財布、拾った。」
学校へ足を進めながら、その財布について青山に告げた。
     「なぁ、なんぼ入ってるん?」
     「知らん。見てないもん。」
     「開けてみようぜ。」
     「アカンやろ。」
     「大丈夫やって。解らへんって。」
     「・・・。」
手に持っていた財布を青山が奪った。
     「おい!」
     「構うもんか。」
平気で青山は中身を物色しだした。
確かに人の財布の中身には興味がそそられる。
     「返せや。アカンって。」
アカンって。と言葉を発しながら、一緒に覗き込むのは人間としての本能なのだろうか。
診察券、免許書、カード、お札。
10万円ものお札がその財布には入っていた。
     「スゲェ~。」
10人の福沢が俺を睨んでるような気がした。
     「警察に届けよ。」
     「お前、アホやろ。」
     「10万円やで。遊び放題やんか。」
     「アカンって。素直に届けて1割貰った方がエエやん。」
     「5千円ずつになるやないか。」
     「???・・・なんで、お前にやらなアカンねん。」
     「なんでくれへんねん。」
     「拾ったんオレやもん。」
     「10万円やで。お前、1万円と10万円どっちが高いと思ってるねん?」
     「・・・どっちも高い。」
     「ごもっとも。いや、違うがな。」
     「ドッキリやったら、どうするねん。」
     「俺らみたいな一般人をドッキリさせて何がオモロイねん。」
     「警察に届けよって。」
     「無理!」
     「何が無理やねん。」
     「警察、倒産した。」
     「何を訳解らんこと言うてるねん。」
     「ほんま、ほんま、食中毒だしたかなんかで。」
     「警察がなんで食中毒をだすねん。」
     「なんでやろな?」
     「ええから返せって。それ、怖い人の財布やったらどうするねん。」
     「え?」
     「10万円やで。普段、お前の親父とか財布に10万円入れて会社行くか?」
青山の動きが止まった。
     「いや・・・確かに・・・。」
     「ヤクザの財布の可能性が高いな。」
     「・・・。」
     「後でドーベルマンとかデッカイ犬がクンクンクンクン、この財布の臭いを嗅ぎつけて・・・ガブリ!」
     「ゴクッ。」
     「肉、持って行かれたら、どうするねん?」
     「・・・人骨丸見え。」
     「血も出るわ。どうするねん?」
     「整理して考えよ。な!」
     「その後、ヤクザに捕まって紐で縛られて・・・。」
     「ヤバイな。」
     「そっちの世界に目覚めてしまったらどうするねん。」
     「相手がヤクザなら色んな道具で殺られてしまうかもしれん。きっと。」
     「警察に届けよ。恐らく金持ちやから、お金いっぱいくれるかもしれんやん。」
     「なるほど。」
     「オー!サンキュベルマッチ。って。」
     「なんで、外人?」
     「ン・・・マッ!」
     「あ・・・ヤクザの外人にキスされた。」
     「とりあえず、警察に届けるからな。」
     「解ったよ。そこまで言うなら、そうしよか。」
青山を納得させ、警察に届ける事にした。
     「納得はしてへんけどな。」
警官に色々聞かれ、結局、学校を遅刻して先生に怒られる事になった訳だが、後に落とし主が現れた。と、警察から学校へ連絡が入り、先生に褒められた。
落とし主はヤクザでもなんでもなく普通の男性だったとかで。

次の日も昨日と同じ風の冷たい朝だった。
     「あ・・・。」
全く同じ所に、パンティが落ちていた。
     「誰のだろう?」
3~4へん辺りを見渡してみたが誰もいない。
絹で出来た白いパンティ。
持ち主はきっと大人だろう。
     「お~い!」
声の方へ首をやると道路の向こうで同級生の青山が手を振っている。
パッ!っと拾いあげ、信号を待って青山の方へ走って行った。
     「パンティ、拾った。」
学校へ足を進めながら、そのパンティについて青山に告げた。
     「開けてみようぜ。」
手に持っていたパンティを青山が奪った。
     「おい!」
     「構うもんか。」
平気で青山はパンティを物色しだした。
確かに人のパンティには興味がそそられる。
     「返せや。アカンって。」
アカンって。と言葉を発しながら、一緒に覗き込むのは人間としての本能なのだろうか。
     「スゲェ~。」
     「警察に届けよ。」
     「お前、アホやろ。」
     「パンティやで。遊び放題やんか。」
     「アカンって。素直に届けて1割貰った方がエエやん。」
     「リボンだけになるやないか。」
     「???・・・なんで、お前にやらなアカンねん。」
     「なんでくれへんねん。」
     「拾ったんオレやもん。」
     「パンティやで。お前、パンティとリボンどっちが可愛いと思ってるねん?」
     「・・・どっちも可愛い。」
     「ごもっとも。いや、違うがな。」
     「ドッキリやったら、どうするねん。」
     「すでにドキドキしとるわ。」
     「警察に届けよって。」
     「無理!」
     「何が無理やねん。」
     「ええから返せって。それ、怖い人のパンティやったらどうするねん。」
     「え?」
     「パンティやで。普段、お前の親父とかパンティ履いて会社行くか?」
青山の動きが止まった。
     「いや・・・意味が解らん。」
     「ヤクザのパンティの可能性が高いな。」
     「・・・どういう事?」
     「後でドーベルマンとかデッカイ犬がクンクンクンクン、このパンティの臭いを嗅ぎつけて・・・そのドーベルマン、変態やな。」
     「何を言ってるのかな?」
     「血も出るわ。どうするねん?」
     「生理やろ。それは・・・。」
     「その後、ヤクザに捕まって紐で縛られて・・・。」
     「ヤバイな。」
     「そっちの世界に目覚めてしまったらどうするねん。」
     「相手がヤクザなら色んな道具でしてくるで。きっと。」
     「恐らく金持ちやから、やられたらお金いっぱいくれるかもしれんやん。」
     「なるほど。」
     「オー!サンキュベルマッチ。って。」
     「なんで、外人?」
     「ン・・・マッ!」
     「あ・・・ヤクザの外人にキスされた。」
     「とりあえず、警察に届けるからな。」
     「解ったよ。そこまで言うなら、そうしよか。」
青山を納得させ、警察に届ける事にした。
     「納得はしてへんけどな。」
警官に色々聞かれ、結局、学校を遅刻して先生に怒られる事になった訳だが、後に落とし主が現れた。と、警察から学校へ連絡が入り、先生に褒められた。
落とし主はヤクザでもなんでもなく普通の男性だったとかで。

男性?
ま、イイっか。

その次の日も同じ風の冷たい朝だった。
     「あ・・・。」
全く同じ所に落ちていた。
     「誰のだろう?」
3~4へん辺りを見渡してみたが誰もいない。
     「お~い!」
声の方へ首をやると道路の向こうで同級生の青山が手を振っている。
パッ!っと拾いあげ、信号を待って青山の方へ走って行った。
     「うんこ、拾った。」
  
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2008年12月12日

カガミ

     「何でも映せる鏡?これが?」
     「そう。見たい物、知りたい事、本当の事、何でも映す事が出来る。」
     「普通の手鏡に見えるぜ。爺さん。」
     「ま、信じるも信じないもお前さん次第じゃがな。」
     「う~~~ん・・・。よし、いくら?」
ある和歌山の田舎の骨董屋さんで見つけた手鏡を親友の雄二が自慢げに見せてきた。
雄二とは同じ高校の同級生でいつも一緒にいた。
     「お前、騙されてんじゃねぇの?」
     「はははは・・・イイんだよ。騙されてても。そういうもんだよ。骨董品って。」
     「それ、本当の骨董品マニアが聞いたら怒りそうな言葉やな。」
     「違うねん。こういう物はな、夢を持つのが大事で信じることこそが全てやねん。」
     「アツい事言うねぇ~。で、なんぼしたん?」
     「聞いて驚け!なんと、1万円。」
     「高っ!絶対、騙されてるわ。」
     「アホ。エエねん。これがロマンや。」
     「意味が解らん。」
     「この鏡を君に売ってあげようじゃないか。」
     「お前、アホやろ。いらんわ。ただの鏡やんか。」
     「ただやない。1万円や。」
     「・・・。」
     「今なら、半額。」
     「お前のロマンはどこへ行った?」
     「一緒に売ってやる。」
     「ただの鏡なんやろ?」
     「うん。」
     「認めた。」
     「困ってるねん。頼むわ。」
     「・・・解った。しゃ~ないなぁ~。その浪費癖なんとかせぇよ。」
     「ゴメン。」
親友の雄二は昔からこんな性格の奴で、困っていた。
5千円でなんの変哲のない鏡を受け取った。
家に帰り鏡を床に置いて、僕はベッドに寝転んだ。
     「バカバカしい。」
しかし、気になってしゃがんで鏡を覗き込んだ。
すると、鏡に前から気になっていた洋子の姿が映った。
その洋子に雄二がコンサートのチケットを渡してデートに誘っている。
     「????」
鏡を持ち上げるとその姿は消えた。
床に置いた。
しゃがんで覗き込んだ。
さっきの光景がまたハッキリと見えた。
     「な、なんだ?」
それよりも洋子や。
猛スピードで雄二の所へ向かった。
     「おい。」
     「おぉ、孝史。」
     「この、鏡。」
     「返品は出来ひんぞ。もう、金は使ってしまったからな。」
     「洋子をデートに誘ったな。何のチケットや?」
     「なんで知ってるねん?」
     「な、なんでって・・・。」
     「見てたんか?ヤラシ~なぁ~お前。」
     「そういう訳やないねんけど。」
俺はふと思いついた。
さっきの事をやってみよう。
鏡を地面に置いてしゃがんで覗き込んだ。
     「お前、しゃがんで何をやってるねん?」
     「マッキーのコンサート!」
     「なんで解ってん?」
いや、待てよ?
肝心の洋子はどう思ってるんだろう?
洋子の気持ち。
鏡には困った表情の洋子の姿が映し出された。
     「洋子、困ってるで。」
     「そんな訳あるか!」
     「洋子がこっちに向かって走って来る。」
     「はぁ?」
     「そして、チケットを返される。」
     「適当な事を言うな!シバくぞ!」
     「しゃ~ないやん。鏡がそない言うてんねんから。」
その時であった。
洋子がやって来た。
     「ゴメンなさい。行きたいんだけど・・・ちょっと、無理。」
チケットが雄二の元に返って来た。
     「本当にゴメンなさい。」
チラッっと僕の方を見て洋子が走ってその場から去って行った。
     「なんでやねん!」
     「な。」
     「な。や、あらへん。」
     「洋子はどうやら、俺のことが好きみたいやな。」
     「適当な事を言うなよ。ボケ!」
     「いや・・・でも。」
     「鏡?」
俺の手から鏡をバッ!っと奪って覗き込んだ。
     「何も映ってへんやないか!」
     「で、でも・・・。」
     「適当な事言うてたら・・・。」
雄二の拳が次から次へと顔面を殴打した。
気付けば、もう陽は暮れていた。
どうやら気を失って倒れ込んでいたらしい。
鏡も雄二が持って行ったようだ。
でも、解っていた事だから驚かなかった。
だって、この後、洋子が介抱に来てくれる事をあの鏡が教えてくれていたからだ。
ほら、来た。
     「大丈夫?」
     「あぁ。」
こうして、僕と洋子はめでたく付き合う事が出来たのだ。

次の日、学校で雄二と会って、洋子と付き合う事になった事を告げた。
昨日の事を気にしていたのか、雄二は僕と洋子の事を祝福してくれた。
     「普通の鏡なんていらねぇよ。」
鏡がまた僕の元へ帰って来た。

確かに普通の鏡だ。

しかし、しゃがんでその鏡を覗いてみると真実を映しだしてくれる。

だって、鏡なんだもん。

かがんで覗きこんだらアナタの持っている鏡も何か見えるかも知れませんよ。
  
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2008年11月12日

信号の戯れ

キキキキキィ~!
ガシャガシャガシャ!
ドン!
グワッシャ~ン!
プワッ、プワッ~ン!

あちらこちらで交通事故が発生。
怒鳴り散らす運転手たち。
街中がパニックになっている。

運転手A 「おい、こら!どうなっとんじゃ!」
運転手B 「我ぇ!ちゃんと信号見て運転せんかい!」

「ええ加減にせぇよ!」
「うるさいボケ!」
などの罵声がとんでいる。

とッ組合っているのは、全身赤色の人間と青色の人間。

 



青 「ちゃんと仕事してよ!」
赤 「知るか!」
青 「仕事やんか。」
赤 「お前はノー天気に進め!進め!言うてたらエエけど、こっちは車とか止めなアカンねんぞ。
   命がけでやってんねん。でも人間、全然、言う事聞いてくれへん。
   みんなワシの事、無視して行きやがる。わしの存在、どない思ってるねん。」
青 「それでも止めるのが、アンタの役目でしょ。」
赤 「だから、お前は青いんじゃ。」
青 「緑です!」
赤 「どっちでもエエわ。」
青 「私もストレス感じてるんやから。ほんまは緑やのに青、青、言われて。
   大体、なんでアンタ、うちの上におるん?可笑しいやん。」
赤 「わしの方が重要なポスト担ってんねん。」
青 「赤なだけに、か?・・・やかましいわ。」
赤 「それにお前のその口調、男の癖に気持ちの悪い。」
青 「女です。」
赤 「女やったん?!」
青 「今まで知らんかったん?」
赤 「知らんかった・・・。シルクハット被ってるからてっきり・・・」
青 「仕方がないやん。仕事着やんねんから。」
赤 「違う。まだ、お前に言いたい事あんねん。」
青 「なによ。」
赤 「なんや?あの曲。」
   「♪パーパポ、パパパパポ~
    パァパァパパパパパパパパパパ・・・って。
    パァパァパァパァ・・・何やねん?」
青 「あれは私が歌ってるんとちゃいます。」
赤 「人を通らすから「通りゃんせ」か?
    ・・・ベタな曲のチョイスやのぉ~。」
青 「あれも社歌やねんから仕方がないでしょ。」
赤 「今風に「EXILE」にするとかあるやん。」
青 「あほか。日本国に「君が代」を「EXILE」にしろって言ってるようなもんやで、それ。」
赤 「耳障りで仕事に集中でけへんねん。」
青 「あんたがな、重要な仕事してるんは解るわ。でもな、私の方もエラいんやで。」
赤 「わしの方が偉いわ。」
青 「そうやなくて、私の方がシンドイねん。
    あんたはボッサァ~って突っ立てたらエエけど、私なんかずっと、ず~っと・・・このポーズやねん。
    もう、腕がプルプルプルプルプルプル・・・限界やねん!」
赤 「知るか!ボケ!
   じゃ、ポーズ変えたらエエやないか。」
青 「どんな?」
赤 「例えば、赤から青に変わるたびに毎回、変えたらエエやんけ。」
青 「は?」
赤 「女なんやろ?セクシーポーズをとるとか。」
青 「何を言うてるん?自分?」
赤 「信号が「赤」から「青」に変わりました。
   ハイ!」
青 「アッハ~ン♡(セクシーポーズ)」
赤 「ハイ!」
青 「ウッフ~ン♡(セクシーポーズ)
   ・・・なんなん?これ!
   あのね、人間は私たちの指示を見て
   信号を渡りはるねん。」
赤 「・・・・・・。もう、アカン。」
青 「は?なにが?」
赤 「やらして。」
青 「は?アンタ、何を言うてんの?」
赤 「エエから。エエから。
   そのセクシーポーズで、やられてしまった。
   ええやん。な。」
青 「エエ事あらへんの。聞いてた?人の話。
   みんな私たちを見て、渡りはんねん。」
赤 「大丈夫や。わしらモザイクみたいなモンやから、解らへんって。」
青 「あのね、みんな私たちの指示をみてるんよ。
   そのしてる表示を見て
   みんなが国道でおっ始めたら、ど~すんのよ。」
赤 「みんな見てる。興奮するなぁ~・・・おい。」
青 「そうじゃないでしょ。
   赤ちゃん出来たらどうするん?」
赤 「いける、いける。」
青 「いけるの意味が解らん。
   紫色の赤ちゃんが生まれてくるんやで。」
赤 「なんで、色が混ざるねん。
   エエやんか・・・なっ。・・・な。」
青 「ちょ、ちょっと・・・アカン言うてるのに・・・
   アァ・・・♡」



青 「・・・・・・・早ない?」
赤 「・・・ゴメン。
   でも、ここの信号、長ない?って、苦情が来るよりかはエエやん。」
青 「何、それ。
   もう一回戦、行くわよ。」
赤 「えぇ?!」



こうしてふたりは仲直りをし、協力仕合い、事故の無い平和な道路を築いていったとさ・・・。

屋外での性行為による犯罪が増えたのはこの一件があったからだとも言われている・・・のは、本当かどうかは定かではない。
  
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2008年11月04日

プライドとおしっこと

    「お疲れ!」
    「お疲れ様でした!」
    「涼ちゃん、また新年のドラマ頼むよ。」

断トツでトップを走っていた秋の人気ドラマ「悪夢の夜」のクランクアップを迎えた、その打ち上げが行われていた。
やっと人気の波に乗り始めた新人俳優「堀田涼介」(25歳)。
モデルの様なスタイルでサングラスに今風のカジュアルなファッション、トップアイドルへあともう一歩というポジションであり、そういう背景からプライドも人一倍高かった。

    「このままこのドラマの数字も益々上がって行くとイイですね、監督。」
    「大丈夫よ、今の堀田君は今や大スターですから。」

主役の相手を務めた中堅女優の「夏島玲子」も堀田涼介のその才能とシュッとしたスタイル全ての才能に対して惚れこんでいた。

    「そうだな、続編やスペシャル盤も視野にいれておこう。」
    「ありがとうございます。」

都内某所のあまり人目のつきにくい路地裏にある小さなBarでの宴は、0時になろうかという処でお開きとなった。

涼介はコートを羽織り

    「まだまだ11月の頭とはいえ、寒いですね。」
    「そうね・・・。」
    「涼ちゃん、2次会行くぞ。」
    「監督・・・僕はちょっと、すいません。明日の朝、映画の撮影が入ってまして・・・。」
    「そうか、残念だな。夏島くんはどうする?」
    「堀田君と一緒だったら・・・と、思ったけど・・・そうね、折角だから参加させて頂くわ。
     堀田君、やきもち焼かないでね。」
    「タクシー呼ぼうか?」
    「あ、いや、大丈夫です。あの大通りに出えたらスグ捕まえれると思うんで・・・。」

和やかなムードで解散し、独り逆の方向に歩きだした、涼介。

    「あ・・・疲れた。」

5分、10分・・・15分・・・歩いても歩いても大通りに出ない。

    「あれ?オカシイな・・・5分もあれば大通りに出るはずなんだけど・・・。」
    
    「うぅっ・・・。」

さっきから尿意を感じていた。

    「・・・ここら辺、どうして何も無いんだ?」

辺りは薄暗く、家屋ばかりが並んでいて人の気配を感じない。

    「ここで、やってしまうか・・・。」

チャックを下ろし・・・

    「い、いや、駄目だ。こんな処を見られでもしたら・・・。
     早く大通りに出ないと・・・。」

足早に道を歩き出した。
角を曲がると、コンビニエンスストアーが目に入った。

    「よ、良かったぁ~。」

コンビニの前には女の子たちが3名程、喋り笑い、盛り上がっていた。
一人の女の子が涼介を見つけた。

    「あ!あれ、堀田涼介!」
    「嘘~!本当だ!」

あれよあれよと涼介の周りに女の子たちが取り巻いた。
引きつりながら、彼女たちのサインや写メ大会、質問攻めに付き合う事になった。
今が一番大事な時でファンサービスも仕事のうちという考えがあった。

    「何を買うんですか~?」
    「え・・・えっと・・・煙草を切らして・・・」
    「へぇぇ~煙草吸うんだぁ~・・・。」

そうこうしているうちにコンビニから出て来た客も寄って来て、更に女の子たちが友達に自慢メールや電話をしたせいで更に取り囲む人が増えた。
深夜というにも関わらず、30人近くが集まってきた。
なんとも言えない汗が頬をつたう。

    「そろそろ時間も遅いし、ね、この辺で・・・。」
    「わ、ヤバ~いぃ、もう、1時過ぎちゃってるよ。」

嘘みたいに人がサーッっと引いて行った。
ホッ。と、一息ついてコンビニへ入って行った。

    「このコンビニ、便所無いんです。」
    「!?」
    「事務所のお手洗い、御借りできませんか?」
    「すいません。」
    「どうしても?」
    「申し訳ありません。」
    「俺、堀田涼介やぞ!」
    「・・・・・誰?」

コンビニ、滞在時間5分で借りれずじまいで出て来る事となった。

    「クッソォ・・・覚えとけよ。」

そんな事より、パンパンに膨れ上がった膀胱くんが心配だった。

    「そ、それよりもど、どこか・・・。」

コンビニを離れ、小走りに立ち去った。
道はまっすぐ続いている。
店も何も見当たる気配は無かったが、とりあえず進んだ。
もはや小走りなのか何なのか解らない足の進め方。
クネクネと変な動きになっているのが解った。
視線を感じた。
物陰からさっきの中に居た少女の影の姿。

    「!?」

シャン!と、背筋を伸ばし気付かぬふりして歩く事にした。

「イメージを壊してはいけない・・・壊してはいけない。」

イメージを壊してはいけない。という意識とプライドで芸能人を保った。
曲り角を曲がったら、視線が途切れた。
安堵感からまたクネクネとなる。
また、視線を感じた。
シャン!
曲り角を探して足を進めるようになってしまった。
曲り角。
クネクネ。
シャン!
曲り角。
クネクネ。
シャン!
もはや、どこを彷徨っているのかもよく解らない状態になってしまっている。
目的も見失っている。
ただ、おしっこがしたい。
曲り角を数度曲がって、ようやく気配が途切れた。

    「もう、限界だ。」

プライドだ。なんだ。と言っている余裕がもはや無い。
チャックを下ろし尿を足そうとした時だ。

    「やっと、見つけたわよ。この常習犯め。」

おばさんが家から出てきたのだ。
慌ててチャックを上げる。
プチッ!
    「イタッ★。」
挟まった。

    「いつもいつも人の家の壁におしっこを引っ掛けてるのは、アナタね!」

凄い形相で睨んで来た。
慌てていたので、そこが人の家の前とは全く気付かなかったのだ。

    「い、いや、違いますよ。」

うずくまった体を起こし、顔を上げた。

    「あ、あんた、堀田涼介!」
    「ホッ。・・・僕の事、ご存知でしたか。」
    「ご存知も何も私、デビューした頃から大ファンなのよ。」
    「あ、ありがとうございます。」

涼介の肩をバンバン叩きながら喜んでいる。

    「勘違いしてごめんなさいねぇ~。」
    「は、はぁ・・・。」

先ほどの顔が180度変化していた。

    「うちの娘も今年で19になるんですけど、あんたのファンなのよ。
     出来の悪い娘でね、ちょっと聞いてよ、この間もね・・・。」

おばさんは、娘話を始めた。
たまらない・・・。
・・・逃げ出したい。
娘話を始める事、5分、10分・・・
ベラベラベラベラベラ・・・
どうして、おばさんという生き物の立ち話は長いのだろう?
ド深夜だというのに・・・。
このおばはんは特別か?

    「・・・なのよ!どう思う?」
    「は、はぁ・・・。(全く話に集中できてねぇんだよ。)
     でも、それは娘さんにもお考えがあると思うんで、」
    「写真イイ?」
    「は、はぁ?
     (なぜ、人の話は聞こうとしない!)」
    「カメラ取って来るから、待ってて頂戴ね。
     娘が帰ってきたら自慢してやるんだから。」

今のうちだ。
逃げよう。

   「サインもイイかしら?」
   「早っ!」
   「あら?色紙持って来たけどマジック忘れたわ。
    もう少し待って貰えるかしら?」
   「あ、マジックでしたら僕、持ってますから。」

早くこの場から脱出しなくては。

サインする手が震えてる。

もう、限界だ。

もう、限界だ。

   「では、明日、早いのでこの辺で。」
   「あら?お仕事?」
   「えぇ、映画の撮影で。」
   「そ、それ!私、楽しみにしてるのよ。CMで観たけど、どんなお話なの?」
   「あ、あの・・・?」
   「何かしら?」
   「その話、長くなります?」

   「キャー!涼介!見つけた!」

先ほどのファンの子だ。
この家の娘だったのか・・・。
なんか似ている様な気がする・・・。

   「ちょっと、こんな遅くまで、どこ行ってたの?」
   「別に。仕事の帰りに友達とあったからコンビニで喋ってた。
    そしたら、堀田さんに会ってずっと喋ってたんだもん・・・ねぇ~~~。」
   「ね、ねぇ~~~。」
   「ちょっと、堀田さん、うちの子をたぶらかしたの?」
   「い、いえ・・・。」
   「堀田さん、あなたねぇ・・・うちの娘と私とどっちを取るの?」
   「は、はぁぁぁ~?」
   「冗談よ。折角、娘に帰ったら自慢してやろうと思ったのに。」
   「ハハハ・・・(笑)」

笑顔がひきつっているのが、自分でも解る。
ひきつっているってもんじゃない。

   「じゃ、私はこれで失礼いたします。」

一歩、足を踏み出した。

股間がぷるぷるぷるぷるしているのが感じる。

満タンのコップに水を張ってこぼさずにそっと歩く様な、そんな感じ。

ちょっとでも揺らしたらこぼれる。

ゆっくり・・・ゆっくり・・・

振り返ると、手を振ってこっちを見ている。

そっと会釈して、また、一歩。一歩。

私が見えなくなるまで見送りしてくれるのだろう。

変なマネは出来ない。

限界だ。
限界だ。
限界だ。

・・・便所借りたら良かった。

後の祭りである。

曲り角を曲がり、今度は辺りを見渡して状況を確認した。

ここなら、大丈夫だ。

プライド?
何、それ?

足元に湯気が立つと共に安堵の表情になっていく自分が解る。

頭上で天使がフォークダンスを踊っている。

    「キャー!」

    「え?」

    「涼介さんが、立っションしてる!」

声のする方へ顔をやると、少女のショックな顔がそこにあった。
手元からマジックが落ちる。
忘れ物を届けに追いかけて来たらしい。

    「いや、違うんだ。違うんだ。」

体ごと振り返ったのがいけなかった。
少女の方へ尿が跳んで行く。

    「・・・・。」
    「・・・・。」

グッショリとなっている、少女。

    「キャァァァ~!」
    「あ、待って。違うんだ!」

弁解しようと慌てて少女を追いかけた。

    「違うんだ。違うんだ。」

おしっこを撒き散らしながら追いかけている。
その時は必至で、新進気鋭の面目を保たねばと・・・。

    「キャァァァ~!」
    「ちょ、ちょっと待って!」
    「ちょっと、君、待ちなさい!」

警察官だ。
少女、涼介、警察官、という追いかけっこの構図が出来た。

    「変質者め!」

警察官に腕を捕まえられた。

    「あ!」

警察官に向かって放尿している自分がいた。

ジョジョジョジョジョ・・・・・

赤いランプが私を我に返した。
走る車の窓から、先ほどのおばさんの胸で泣いている少女が見えた。

この瞬間から「堀田涼介」の姿をメディアで見た者はない。

なぜ、芸能界から忽然と姿を消したのか、それはあの親子だけが知っている。
  
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2008年11月02日

眠れない夜

雲の隙間から月の光が射し、夜空は明るい秋の夜。
疲れ切った体を引きずりながら帰宅をしている男性、某中小企業の食料品販売メーカーの営業マン山中公平35歳。
アパートの扉を開け、そのまま布団に倒れ込んだ。
   「あ~・・・疲れたぁ~。
    毎日、毎日、営業、営業・・・朝から晩まで・・・。
    はぁぁ~。
    ゲッ!もう、1:00回ってるやん。

   「明日・・・6時起き・・・。」
 
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」

   「あ~・・・眠れん!
    こんなに疲れてるのに眠れん!
    なぜ?

   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」

カチ・・・
カチ・・・
カチ・・・
   「時計、うるさい!」

ガン!バン!

   「あ・・・。」
目覚まし時計の残骸が床に転がった。

   「チッ。」

携帯電話を見ると既に2:00を回ろうとしていた。
そのまま携帯電話のアラームをセットし、目を閉じた。

   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」



   「なぜ、眠れん?」

   「眠れない時、そんな時は・・・よく、羊を数えたらエエって言うよな。
    ベタやけど・・・やってみるか。
    羊が一匹・・・羊が二匹・・・羊が三匹・・・なんで、羊なん?
    羊やなくてもエエんちゃうのん?

    どうせなら、上野樹里・・・
    上野樹里が一人目、上野樹里が二人目・・・上野樹里が三人目・・・

    ミニスカートに履着替た、上野樹里が四人目。

    柵を跳び越えたら、チラッ!

    おっ!おぉ~・・・
    もう、もうちょっとで見えるのに角度をもう少し・・・

    樹里、頑張れ!
    樹里が五人目~!
    樹里ぃ~!ジャンプ!
    ジュリィ~!ほりゃぁっ!
    窓際で寝返り打~ってぇ!ほりゃぁっ!
    ・・・ジュリーやん。
    なんで、沢田研二が跳んで来るねん。
    しかもミニで。
    
    ・・・ブリーフ派かよ。」

   「アカン、アカン、違う方法で寝よ。」

   「子守唄がエエんちゃうか。
    自分に歌うのん?ま、いいっか。
    
    ♪ねんね~ん、ころりよ~おころ~り~よ~・・・

    ・・・そういや、昔、コレラの事、コロリって言ってたって歴史で習ったっけ。
    コロリコロリと人が死んで行くから・・・コロリって言うねんな、確か。」

   「どうでもエエわ!そんなん。」

   「寝なアカンねん。今は!
    ♪年々、コロリよ~おコロリよ・・・怖ッ!
    ・・・なんちゅう~歌や。」
   「違う方法にしよ、縁起でもない。」

   「・・・楽しい夢でも見よ。」

   「・・・夢か・・・。
    本当は俺、漫画家になりたかったんよなぁ・・・現実、営業マンって。」

   「営業の仕事が悪いって訳やないねんけど、漫画家を目指す為に美術系の専門学校を出といて、結局、挫折して・・・。」
   「い、いや、これからでも遅くない!夢を見て頑張ればエエんやんか。」

   「今度の休み、久々に作品を書いてみようかな・・・。完成したら投稿して・・・諦めたら終わりやもんなぁ・・・。」

   「なんで、こんなド深夜に熱いねん、俺。
    そうやなくて、寝なアカンねん。明日、早いねん。まったく・・・。」

   「漫画家になるには、作品を書く。
    作品を書くには、時間がかかる。
    時間がかかるという事は、眠れない。」

   「俺は、寝たいねん!」

   「アカン、他の事を考えよ。」

   「おっぱいがいっぱい。」

   「違う。違う。何を考えてるねん。俺は!
    ん・・・俺は明日、朝が早いねん。寝なアカンねん。」

   「目を閉じて・・・無心に・・・。」

プ~~~~~~ン

   「なんで今時、蚊がおんねん!」

パチッ!

   「眩しっ。」
   「どこやぁ~・・・おらぁ~っ!
   「そこか!」
パン!
   「チッ!くるあぁ~~!どぅりゅうぅぅわぁぁ~ぁ!」
パン!パン!パン!
パリン!
   「・・・あ。」

ひゅるるるるるる・・・・
   「窓、割れた。」

ひゅるるるるるるるるるるるるる~~
   「さ、寒い!」
パチッ!
   「なんで、こんな目に合わなアカンねん。」

   「寝よ。寝よ。無心や。無心。」

   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」
   「・・・・。」

♪パラリラパラリラパラリラ・・・・
ブロロロロロロロロロ~

   「うるぁぁあああ~!うっさい!」

ダダダダ・・・ガラッ!

   「2階のベランダから1階まで、ド~ン!」

   「・・・。」

   「痛ったぁ~。・・・足、グリン!いうた。」
   「ちっくしょ~。暴走め・・・どこに行った?」

暴走族がいつまでもその場所にいてる訳もなく・・・

   「くっそぉ~。泣き寝入りするしかないんか。
    ・・・って、寝ることすら出来てへん!ちゅ~ねん。」

   「・・・ったく。」

ガチャガチャガチャ・・・

   「・・・。
    カギ、閉まってるぅぅぅ~!」

ひゅるるるるるるるるるるるるる~~

裏から2階へよじ上るしか方法は思いつかなかった。
   「・・・なんで、自分の家に入るのにベランダから入らなアカンんねん。
    窓が割れて中には入れるのが、不幸中の幸いとでもいうべきか・・・。」

   『ドロボ~!』

大きな雄叫びを上げたのは、1階に住む50前後のおばさんだった。

   「いや、違うんです。違うんです。」
   『じゃ、チカ~ン!』
   「じゃ、って、違うんですって。」
   『ほな、レイプ魔~!』
   「だから、違うんですよ。」
   『他にこんな時間の犯罪って何があるっていうのさ。』
   「だから、どれでもなくて、ほら~・・・僕ですよ。
    ボクボクボク・・・。」
   『ボク ボクボク??外人さん?』
   「誰が中国人ですか。違いますよ。2階に住んでいる。」
   『アッ!あぁ~・・・山中さん。』
   「そう。」
   『山中さんが泥棒さん』
   「だから、違いますって。」
   『痴漢?』
   「違います。」
   『レイプ魔・・・』
   「・・・でも、無いです。」
   『中国人。』
   「誰が、ボク ボクボクですか。誰ですすのん。それ。」
   『大体、何で今時分に壁をよじ上がってはるの?』
   「実は、鍵をかけたままで家に入れなくなってしまって・・・。」
   『そうだったの・・・そうならそうと早く言えば良かったのに・・・。
    お父さ~ん。』
   「ホッ。捨てる神あれば拾う神ありやな。」
   『お父さん、警察、キャンセルね。』
   「通報済みかい。」
   『じゃ、おやすみなさい。』
ガラガラガラ・・・ピシャッ!
   「・・・冷たっ。」

ひゅるるるるるるるるるるるるる~~
ひゅ~るりぃ~ひゅ~るりぃ~らら~

   「嘘やん。助けてくれると思ったのに。」
   「クソッ。何とかして家に帰らんと・・・明日の仕事に響く。」
ガラッ!
   「おばさん。」

   『お父さんがね、ハシゴあるから貸してあげなさい。って』
   「おぉ~ッ!ありがとうございます。」

ハシゴをかけると何とか2階まで届いた。

   「ありがとうございます。」

ゆっくりと足をかけて上ぼり始めた。
ズキッ!
先ほどのくじいた足の痛みが響く。
   「ウッ。」
   「あと、もう少し。」
   
   『あ、そのハシゴ、8段目折れるから気を付けてね。』

バキバキバキバキ・・・ガン!
   「イタタタタ・・・そういう事は先に言って貰えます?」

何とか寝床に戻る事が出来た。

   「ふぅ~・・・疲れた。」

冷蔵庫を開け、ビールをクイッっと、飲み干した。

   「あ・・・落ち着いた。」

   「ふわぁぁぁ~。」

大きな欠伸をひとつ。

   「始めっからお酒を飲んでたら良かった。
    ・・・急に眠気が・・・うん。」

   「・・・。」
   「・・・・・・ZZZZ」

♪トゥルルルルゥルルルル・・・

   「あ・・・携帯、鳴ってる。」

♪トゥルルルルゥルルルル・・・

   「誰やねん?やっと寝着いたところやのに。」

♪トゥルルルルゥルルルル・・・
♪トゥルルルルゥルルルル・・・
♪トゥルルルルゥルルルル・・・

   「ひつこいなぁ・・・もしもし・・・。」

   「!?アラーム・・・。」

   「眠らせろや!」















・・・っていう様な感じの漫画を書いて応募しようと思うねんけど、どう思う?

さぁ・・・・。


  
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2008年11月01日

察して。

  主役の青年:山本太一
  主役の彼女:川中洋子
  先輩:村西健一

L 明転。
舞台中央 → 山本太一の部屋。
山本太一 → 就寝間近。
山本太一 高校2年生 一人暮らし。Tシャツ・短パン。

歯を磨き、布団を引いたりと、寝支度をしている。
欠伸をして蛍光灯のヒモを引っ張るジェスチャー。

SE 蛍光灯のヒモを引っ張る音。
   ♪ パチッ。
L 暗転。
SE 電話音。( → 着メロ。)

太一 「・・・はい・・・あ、洋子か・・・。」

影マイクで洋子の声。

川中洋子 高校2年生 太一の彼女でクラスメート。

洋子 「私の事、好き?」
太一 「・・・はい?」
洋子 「ねぇ?」
太一 「・・・ん?なに?いきなりどうしたん?」
洋子 「今から行ってイイ?」
太一 「今から?」
洋子 「11時位に着くから。」

SE ♪ ツーツーツー・・・・。

太一 「え?ちょっと!・・・あ・・・・。」

SE 蛍光灯のヒモを引っ張る音。
   ♪ パチッ。
L 明転。

太一 → だるそうに欠伸をする。掛け時計を見ながら。

太一 「何?・・・10時半・・・。あと、30分・・・。ねむ・・・。」
SE チャイム
   ♪ ピンポーン!
太一 「早っ!」

太一 → 上手・玄関に移動。

太一 「はい。」

SE 扉を開ける音。
   ♪ ガチャッ!

太一 「早かったね。」
村西 「おう!・・・邪魔すんで。」
村西 → 靴を脱いで、部屋に上がろうとする。

太一 → 阻止をする。

太一 「ちょ・・・ちょちょちょっと、待ってください。」
    「どうしたんですか?先輩?こんな時間に。」
村西 「なんか来て困る事でもあるんか?」
    「・・・あ!女か!」
太一 「あ!はい!あ・・・いや・・・んな訳無いじゃないですか~!嫌だなぁ~先輩。」
村西 「そうだよな。我がサッカー部は、女にウツツ抜かしている場合では無いからな。女にウツツ抜かしてる奴はダメだ!もし、我がサッカー部にそんな奴がおったら、俺が許さん!ドツく!」(強く。)

    「俺より先に彼女を作るなんて羨ましい。」(ボソッ。と。)
太一 「はい?」
村西 「はぁぁぁ~あ。」(溜息。)

村西 → 部屋に上がり部屋中を検索。(下手に行って見渡したりする。)
太一 → 先輩の後をついて回る。
村西 → 布団をたたんで、テーブルを出して座る。

太一 「あの~。今日は帰ってもらえません?」
村西 「先輩に逆らってはいけません!」(強く。)
太一 「は、はぁ・・・も~、一体、何なんですか?」
村西 「実はな、用事があって来たんや。」
太一 「何ですか?用事って。」
村西 「部屋、結構、片付いてんねんな。」
太一 「何ですか?用事って。」(さっきより強く。)
村西 「もう、7月も終わりやな。22日やで。早いな。」
太一 「何ですか?用事って。」(更に強く。)
村西 「言うてる間に23日なるで。」
太一 「先輩!用事って何なんですか?」(強く。)
村西 「急がすなぁ。いや、まぁ、サッカー部にも新しい1年生が入ってきてもう半年になる訳やけど、どう?」
太一 「・・・どう?って言われても・・・・。まだ、良く解からないですけどね。」
    「そんな話でしたら、明日、部活の時に聞きますから。」
村西 「後輩とか、先輩のお前の言う事ちゃんと聞いてるか?
    うちのサッカー部、先輩の言う事は絶対や!って言う事をちゃんと教えといてやらんと、アカンぞ。」
太一 「は、はぁ・・。」
村西 「その代わり、先輩になったら責任感も必要になってくるからな。それに常に周りを見て注意して行動せなアカン。」
太一 「はぁ、・・・確かにそうですけどね。」
村西 「それが、今のお前に出来てるか!って言う話や!」
太一 「もう、そんな話でしたら明日、聞きますから。」
村西 「周りの人間が何を考え、何を思っているのか相手の気持ちを察して行動せなな。」
太一 「はい!解かりました!・・・・でわ・・・。」
村西 「俺は、今、お前が何を考えてるか、どう思っているか解かるぞ!」
太一 「ホナ、帰れや。」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「ん?」
太一 「いや、何でも・・・。」
村西 「逆に、俺が何を考えてるか解かるか?」
太一 「あ・・・ちょっと・・・。」
村西 「そうやろ。解からんやろ。
    相手を解かろうとせぇへんから解からんねん。解かるな?」
太一 「解かるか!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

太一 「あ!先輩!もう10時45分ですよ。」
村西 「おぉ。そうか。今日も、もうスグ終ろうとしている訳だ。・・・こんな時間に悪かったな。」
太一 「いえ。・・・お疲れ様です。」
村西 「今、TV何やってる?」

村西 → TVを付ける。

太一 「帰れへんのかい!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

SE リモコンの音。
   ♪ ピッ。

村西 「おい!」
太一 「・・・。」
村西 「おい!って!」
太一 「はい?」
村西 「・・・解かるやろ?」
太一 「何がやねん?」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「TV欄や!TV欄!察しろや!人の気持ちを!」
太一 「・・・はぁ。すいません。」
    「でも、ボク新聞とって無いんですよ。」
村西 「はぁ?無いの?7月22日付けの新聞?・・・とっとけや!俺、見るのに!」
太一 「なんで、アンタの為に新聞をとらなアカンねん!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「もっと、人の気持ちとか察した方がエえな。」
    「それに、普通、お客さんが来たら、出て来るもんとかあるやろ。」
太一 「え?は、はい。す、すいません。・・・麦茶でイイっすか?」
村西 「あぁ。」
太一 「チッ!」

太一 → 舌打ちをしながら、下手・台所に移動。

村西 「大体な、それがお前のアカンところやぞ。」
    「もっと、周りを意識しとかんと。その辺が試合中のプレイにも出てるねんぞ。」
太一 「チッ!何やねん?関係あらへんやんけ!」

太一 → ボソッ。っと、呟きながら、麦茶を注ぐ。

村西 「おい。灰皿どこや?」
太一 「わぁ!」

村西 → 太一の背後に立っている。

太一 「無いですよ。ボク、煙草吸いませんもん。」
村西 「ほんま、気の利かんやっちゃなぁ。」
    「ホナ、この湯飲みを借りるで。」

村西 → 湯飲みを灰皿代わりに代用しようとする。

太一 「やめて下さいよ!」

太一 → 湯飲みを取り上げる。

村西 「なんやと?」
太一 「この湯飲みは、じいちゃんの形見なんですから。」
村西 「ほんま、自分、解かってないわ。さっきから言うてるやろ。周りの人間が今、何を考え思っているか察して行動せぇ!って!」

太一 「でも、この湯飲みだけは駄目なんですよ。」
    「ボクが小学生の頃、学校で作って入院していたじいちゃんにプレゼントした湯飲みなんですから。」
    「・・・ま、プレゼントする直前に亡くなりましたケドね。」
村西 「プレゼントかぁ!へぇ~。」
太一 「とにかく、じいちゃんの形見で大切な湯飲みなんです。」
村西 「プレゼント!成程な。プレゼントな。」
太一 「そうなんですよ。」
村西 「でもな、周りの気持ちを考えて行動していたら普通、この場面では
   「灰皿が無いのでこの湯飲みを代わりに使って下さい。」になるやろ。」
太一 「なるか!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

太一 「煙草吸うんやったら帰って下さいよ。」
村西 「ホナ、吸いません。ボク、禁煙中ですねん。」

村西 → 舞台中央に戻る。

太一 「はい、麦茶です。先輩。」
村西 「お前、ほんま解かって無いなぁ。泡の出る方の麦に決まってるやろ。」
太一 「え?ビールですか?無いですよ。そんなもん。」
村西 「一緒に乾杯しようやないか!今日という日を。」
太一 「でも、ボクはお酒、駄目ですから。」
村西 「何や?今日、お前、車か?」
太一 「・・・・。」
村西 「冗談や。冗談。(笑)・・・でも、無い物は仕方がないな。」
太一 「・・・ですよね。じゃあ、そういう事で・・・。」
村西 「俺は今、お前が何を考えているか解かるぞ。」
太一 「ほんまですか?・・・もう11時ですもんねぇ。お疲れ様です。」
村西 「自販機もう使えんから、コンビニな。」
太一 「は?」
村西 「解かってるがな。お前が言いたい事くらい。」
    「ちゃんと、留守番してるがな。」
太一 「違うがな!帰れや!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「今日という日はもう二度とやって来ない!7月22日という日は永遠なり!乾杯!」
太一 「何を言うてるねん!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「あ~!ケーキも食べたい!」(叫ぶ。)
太一 「ケーキとビール会わんやろ。」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「何をしてるねん!早く行って来いや!喉渇いとんねん!こっちは!」
太一 「麦茶あるやんけ!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「先輩命令や!」
太一 「あ~!もう・・・・。解かりました。買ってきますよ!」

太一 → 上手にハケる。
L 暗転。~FO.

SE 電話音。( → 着メロ。)
影マイクで太一・洋子の声。

太一 「あ・・・もしもし・・・今日はちょっと・・・アカンわ。」
洋子 「どういう事よ?」
太一 「いや、ちょっと・・・な。」

SE ♪ ツーツーツー・・・・。

太一 「え?ちょっと!あ・・・・切れた。」
    「・・・怒らしたかな・・・。ま、明日、謝ったら大丈夫やろ。」

L 明転。~FI.

部屋がさっきより散らかっている。
テーブルの前に村西と洋子。何か話している様子。

L 完全に明転。

太一 → 上手より戻って来る。買い物袋を持っている。
SE 扉を開ける音。
   ♪ ガチャッ!

太一が帰って来たと同時に、
村西、洋子に迫る。
洋子、村西を嫌がる。

太一 「洋子!」
村西 「おぉ!早かったな。それにしても気が利くやん。解かってるやん。デリヘルを頼むなんて。」
太一 「女にうつつ抜かしてるのん、お前やん!」

太一 → ボソッ。っと、呟く。

村西 「でも、こいつアレやな。サービスも顔もイマイチやな。」
洋子 「太一くん。」

洋子 → 太一の傍に駆け寄る。

村西 「おい、チェンジ言うてくれ。」
洋子 「ちょっと、この人、何なのよ?」
太一 「ゴメン・・・いきなり来ちゃってさぁ・・・。クラブの先輩。」
村西 「何をごちゃごちゃ言うとんねん?」
太一 「あ、は、はい!すいません。・・・ビールです。」
洋子 「ちょっと、帰ってもらってよ!」
太一 「でもな、先輩やし。」
洋子 「ここアンタの家でしょ!」
太一 「ま、まぁ。」
洋子 「それに、あの人、私の胸を触ったのよ。」
太一 「え?」
洋子 「お尻も。」
太一 「でも・・・。」
洋子 「怒らないの?チューもされそうになったのよ!チューよ!チュー!」
    「何とか言ってよ!アイツに!」
太一 「あ・・・・。」

村西 → 寝ながら湯飲みを灰皿代わりに煙草を吸いながらTVを観ている。
太一 → キレる。

太一 「われぇ!こらぁ!」
村西 「ん?」
洋子 「・・・太一くん。」
太一 「この湯飲みは大事なモンや!言うたんとちゃうんけ!」
洋子 「そっちかよ!」

洋子 → ボソッ。っと、呟く。
太一 → 村西を殴る&蹴る。

太一 「われぇ!何を灰皿代わりにしてくれてるねん!」
    「灰になったじいちゃんとかけてます!ってか?・・・上手い!上手ないわ!
    この世で一番大切なモノを・・・。」
村西 「すまん。すまん。落ち着け。落ち着けて。」

洋子 → 段々と怖い形相になっていく。

洋子 「・・・われぇ!こらぁ!太一!私と違うんかい!この世で一番大切なんは!」

洋子 → 太一をドツく。ビール瓶でドツく。
太一 → 洋子の攻撃を何発目からは、かわしながら。

太一 「だって、こっちは湯飲みやぞ。」
洋子 「じゃあ、私は、湯飲み以下か!・・・・もう、頭にきた!」

洋子・太一 → 喧嘩を始める。(一方的に洋子が攻撃している。)

洋子 「大体ね、なんで私がこんな時間にあなたに会いに来たのか解かってるの?」
太一 「そうや!なんで、こんな時間に来るねん!明日、会えるやないか!」
洋子 「今日で無くちゃ、意味が無いのよ!」
太一 「訳がわからんわ!」
洋子 「本来なら、今日一日中、一緒に居たかったのに・・・連絡もよこさないし、どういう事よ!」
太一 「だから、別に今日や無くてもエエやないか!」
洋子 「今日じゃ無かったら意味が無いのよ!」
村西 「まぁまぁ、おふたりさん、喧嘩は良くない。」

村西 → 喧嘩を止める。

太一 「そもそもの原因はアンタのせいやないか!」

村西 → 太一を殴る。

太一 「何をするんですか!」
村西 「お前が悪いねん!」
太一 「何でなんですか?」

洋子 → 村西に近づいていく。

洋子 「村西さん、ごめんなんさいね。無理な事頼んじゃって。」
太一 「え?なに?」
村西 「こいつ、アカンわ。」
太一 「え・・・?どういう事?」
村西 「もうすぐ7月22日が過ぎ去ろうとしてるなぁ!ケーキかぁ!プレゼントかぁ!」
    「まだ、わからん?」
太一 「・・・まったく。」
村西 「アカンわ、こいつ、彼女の誕生日、忘れてる。」
洋子 「無理なことお願いしてごめんなさいね。」
太一 「・・・え?グル?」

      洋子 → 太一にまくし立てる。

洋子 「・・・そうさ!グルさ!私が村西さんにお願いしたのさ!中学の時の先輩なのさ!」

太一 → 謝る。
洋子 → まくしたてる声は段々とヒートアップしていく。

洋子 「私より、そんなに湯飲みの方が大事か!」×5回。
洋子 「私の胸が他の人に触れられても平気なんか!」×5回。
村西 「もう、あなたとは終わりよ!」
    「今日は私の誕生日だったのに・・・もの凄く楽しみにしていたのに・・・。」
    「あなた、私にぜんぜん興味が無いみたいじゃない!もうイイわ。別れましょ!あなたなんか大嫌い!」
   
村西 「・・・・代わりに言うたったで。」
洋子 「・・・察してるねぇ~。」

  
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2008年10月31日

関取くん

リズミカルにふんどし姿でシコを踏みダンスで登場。

♪ふん、ふん、ふん、ふん、ふんどし~♪

関取くんで~す!

なぜか、ふんどし~!
ドスコイ!
いや~・・・ほんと、誰か「まわしを回してぇ!」
出た!出ましたよ!駄洒落!

いや、いや・・・今日も綺麗な方が多いですね。
みんな、べっぴんさんに見えますよ。
いや、本当。
うわべ投げ!(上手投げの動作で)

こんな関取君にも悩みがあるんですけど、聞いてくれます?
洗顔クリームの減る量がハンパない。
面積がデカい。
もし、今が戦時中だったら的デカい!
僕がキャッチャーミットやったら全部ストライク!
言うてね~ぇ~。

♪ふん、ふん、ふん、ふん、ふんどし~♪

関取くんのショートコント
「告白。」
無理!

♪ふん、ふん、ふん、ふん、ふんどし~♪

関取くんの落語
♪ふん、どどんどんしんししんでんでん・・・
え~・・・昔から小咄というのが落語の頭に導入されまして・・・
小咄ってどういうもんかと申しますと
例えば「隣の空き地に囲いが出来たんだってねぇ・・・
ドスコイ!
ははは・・・囲いを壊したった。

そんな関取くんにも得意技もあるんですよ。
どんな、ど~んな、満員電車でも絶対に座ることが出来るんですよ。
席取りなだけにね・・・
・・・ドヤ!
ドスコイ!

♪ふん、ふん、ふん、ふん、ふんどし~♪

ごっつあんでした♪
  
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2008年10月29日

自販機

小学4年生の少年 アキラとユウキ

ユウキ 喉、渇いたなぁ・・・
アキラ あ、あそこに自動販売機あるで。
ユウキ あ、ほんまや。
アキラ ちょっと買いに行こ。
ユウキ うん。でも、お金持ってるん?
アキラ うち金持ちやで。任しといて。

アキラ、電話を取り出す。

ユウキ どこに電話してるん?
     あ、うちからお金持って来て貰うんやね?
     流石、金持ち。

アキラ あ、もしもし・・・サン○リアさんですか?
     自動販売機、買いたいねんけど。
ユウキ その物を買うん? ちょ、ちょっと待って。
アキラ アカン?なんで?
     子供やと思ってなめてたらあきまへんで。
ユウキ アキラくん、2本でええねんって。
アキラ なんでアカンねん。
     うちの親父の名前聞いたらビビるぞ。
     大財閥の・・・
ユウキ アカンって。嘘はアカンって。
アキラ サン ガリ雄や。
ユウキ やめてって。怒られるって。
アキラ 場所?場所はな・・・阿倍野のポストの角や。
ユウキ いけたんや。
アキラ 阿倍野のポストの右角や。
     四角いやっちゃ。
     解らん?
     赤いやっちゃ。
     だから・・・住所言うで。・・・よぉ~聞きや。
     大阪市阿倍野区・・・
     帝塚山
     ・・・ポストや。
     四角いやっちゃ。
     赤いやっちゃ。
     解らん奴っちゃなぁ~。
     ツーツー言うてんと、返事せぇや!
ユウキ 切られてるやん。
アキラ 失礼な奴っちゃ。
ユウキ アキラくんの方がよっぽど失礼やと思うけど。
アキラ そんな事よりどうする?
ユウキ アキラくんのせいやで。散々、期待させるから余計に喉が渇いたんやで。
アキラ そんなに喉が渇いたん?任しといて。

アキラ、電話を取り出す。

ユウキ また、どこに電話してるんよ?
アキラ あ、警察病院ですか?
ユウキ 警察病院?
アキラ 整形外科お願いします。
ユウキ 整形外科?
アキラ えぇ、友達が喉を渇いたらしくて、
     喉そのものを取って欲しいんです。
ユウキ アキラくん?
アキラ 根本治療や。
ユウキ ちょ、ちょっと。
アキラ だから整形外科の出張サービスを。
     アカン?なんで?
     ツーツー言うてんと、返事せぇや!
ユウキ また、切られてるし。
アキラ 外科の出張サービスはやってないみたいやな。
ユウキ 当たり前だよ。
     もう、イイよ。帰ろうよ。
アキラ 喉は?
ユウキ イイよ。家に帰ってから飲むから。
アキラ 任せとけ。

アキラ、電話を取り出す。

ユウキ 今度はどこ?
アキラ あ、もしもし、ユウキくんのお母さん。
     オレ、オレ。
ユウキ ちょっと、アキラくん、代わって。
アキラ オレやんか。ほら、オレ。
ユウキ アキラくん、ってば。
アキラ ツーツー言うてんと。
ユウキ うちのお母さん、察するの早いな。
     オレオレ詐欺と間違えられてるやん。
アキラ 大正解やん。
ユウキ やっぱり全部ウソやったんかい。
  
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2008年10月28日

カステラ

時は1571年、室町。

長崎の船場に宣教師が降り立った。

風の強い雨がパラパラと降り注いでいた午後の事である。

鼻の下には長い髭を蓄え、シルクハットにマント姿、杖、胸には交差されている形のネックレスをした背の高い男。

この様な風貌の人間なんてこれまでの日本人は見たことが無い。

近づいて来て何か言いたげだったが、まるで動物の鳴声のようなものが耳に届くばかりである。

化け物でも見るような反応。

遠ざかっていく人々。

中には見世物にでもしてやろうという輩も出て来て、追いかけられる始末。

受け入れ態勢が皆無な時代である。

皆さんがご存知のように長崎という街は山に囲まれておりまして、日も暮れ、雨の中、追い回され山の方へ逃げ込むほか方法は無かった。
山道で迷い途方に暮れてしまった。

数時間歩き続け、空腹の中ついに倒れてしまう。

何時間が経過したのだろう。
目を覚ますとほんの小さなひとつの明かりを見つけた。

微力を振り絞り一歩、一歩と近づいて行った。

小さな古いお寺。

扉をノックして、しばらくすると中から住職らしき男が顔を覗かせた。

泥まみれの背の高い男、安堵感からかそのまま住職にもたれるかの様に倒れた。

高熱も出たせいか、2~3日寝込んでしまっていたようである。

目を開けると、介護をしてくれている住職。

やさしさのあまり涙がつたい、この地に降りてこんな親切を受けたのは、始めてだ。

数日が経ち体力も回復し、介護のお礼にでもとお菓子を作ろうと宣教師は原材料を調達に出かけた。

卵、小麦粉、砂糖で作られたシンプルなお菓子。

そう「カステラ」である。

カステラを日本人で始めて食したのがこの住職なのである。

人と人との気持ちが通じ合った時間。

「カステラ」とは、「お寺」を「貸す」というところから語源となって、今日に至るという話である。

そして宗教上からこの寺を追い出されるまで、おおよそ45年間その寺に住み続けたということだ。




















ウソじゃ、ボケ!
  
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2008年10月27日

VS扇風機

小学4年生の将太が凄い形相で扇風機を睨んでいる。

今日も勢いよく回ってやがるな。

よし、勝負だ!

首を振るんじゃない!

潔く勝負せよ!

よそ見をせんとコッチを見たらどうだ!

カチッ。

そうだ、そこに固定するんだ。

では、こっちからいくぞ!

とりゃぁぁ!

キャイン!

ギャアアアアアッ!

のたうち回る、将太。




注意・回ってる扇風機にちんちんを突っ込んではいけません。























ピクピクしている、ちんちん。

  
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2008年10月26日

温暖化対策

真夏日。
外はカンカンと日が体を刺している。
テニス部の練習を終えた、先輩と後輩の2人が休憩室に入ってくる。

後輩 「あれ?冷房効いてないですね。」
先輩 「早よ、つけて。死にそうや。」

後輩、冷房のリモコンに手をやる

後輩 「設定28度まで。これ以上下げないで下さい。・・・って書いてますよ。」
先輩 「ん?今、何度になってるねん?」
後輩 「ちょうど28度。」
先輩 「とりあえず、部屋が涼しくなるまで温度下げて。」
後輩 「いや、駄目ですよ。下げないで下さい。って書いてありますから。」
先輩 「先輩命令でもか?」
後輩 「その前に命令してるのは学校側ですから。」
先輩 「真面目か。だから、テニス部のイイ子ちゃんは嫌やねん。爽やかボーイ気取りか。」
後輩 「ダメですよ!地球温暖化対策にご協力ください。って、書いてあるんですから。」
先輩 「地球温暖化?関係あらへんがな。」
後輩 「二酸化炭素が増えたら、地球の温度が上がるからダメなんですよ。」
先輩 「・・・。お前、沖縄とかハワイとか好きか?」
後輩 「え?好きですよ。」
先輩 「俺もや。俺も好きやねん。地球が温暖化してみ、この大阪もハワイみたいに温かい気候になるんやで。わざわざ行かんでもエエんやで。温暖化賛成!ハイ、冷房下げて。」
後輩「どんな理屈ですか!先輩、温かい所が好きなんですよね?じゃ、クーラーも必要ないじゃないですか。」
先輩 「屁理屈を言うな!」
後輩 「どっちがですか!」
先輩 「早く下げろや。温かいのんと蒸し暑いのんでは全然違うねん。」
後輩 「あのね、温暖化が進むと、南極の氷とか北極の氷とか溶けて水面が上昇するんですよ。街中が水び出しになるんですよ。」
先輩 「水不足が解消できるな。」
後輩 「海水なんか飲めないでしょ。街中が海になっちゃうんですよ。」
先輩 「そこらじゅう、水着ギャルでいっぱいや。エエ事やないか。今すぐ、ガンガンに温暖化を進めて。」
後輩 「老婆の裸が蔓延するだけですって。」
先輩 「西成だけや。よく考えろや。な。普段やったら、海に行く、電車に乗る、時間がかかる、イライラする、遊ぶ時間が減る、
海に着く、人だらけ、イライラして帰るだけ。 それが、家を出たらスグ海や。水着ギャルだらけや。パラダイスや。」
後輩 「根本的に人間として間違っていますよ。今、日本中が地球温暖化対策に取り掛かろうと
頑張っているのに何なんですか!先輩のその言い草は。」
先輩 「戦時中か。「お国の為に。」言うてる場合か。暑いから冷房の温度を下げてくれ。って、言うてるだけやろ。」
後輩 「地球が悲鳴を上げてるんですよ。」
先輩 「幻聴や。」
後輩 「実際に「ギャー!」って聞いた訳ではないですよ。」
先輩 「もうええ。お前と話をしてたら余計、暑いわ。リモコン貸せ。」

先輩、後輩のリモコンを取り上げ、温度を下げる

先輩 「あ~涼しいなぁ~。」
後輩 「・・・。」
先輩 「なんやねん。その顔は?涼しくないんか?」
後輩 「涼しいですよ。」
先輩 「始めっからこうしてたら、喧嘩なんかせんで済むねん。平和的解決方法やな。平和が一番!そうやろ?」
後輩 「・・・は、はぁ・・・。」

部室に顧問の先生が入ってくる。

先生 「・・・誰や。リモコンを勝手にいじった奴は。」
先輩 「先生、あんまりですよ。」
先生 「なにがだ。」
先輩 「練習でヘトヘトになって、汗をベッタリかいてるのに28度設定は殺生ですよ。」
先生 「誰や?リモコンをいじったんは?」

先輩、後輩をチロッっと見る

先生 「お前か!」
後輩 「ち、違いますよ。」
先輩 「先生、僕もね、いじったらダメって言ったんですよ。」
先生 「リモコン、45度になっとるやないか。」
先輩 「角度かい。」
先生 「その方が取りやすい。」
  
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2008年10月25日

ペタ男

夜道。

街灯の無い薄暗い道

女性が一人、歩いている。

後ろから男の気配を感じる。

ペタ・・・ペタ・・ペタ・・・

段々物音が大きくなる。

ペタ・・・ペタ・・ペタ・・・ペタ・・・ペタ・・ペタ・・・

女性の悲鳴。

女性「キャー!」

振り返る、女性。


すると、男があちこちにシールを張りまくりながら近づいて来た。

女性「え?」

男、「ニタッ」って、笑いながら話しかけてきた。

女性「な、何?」

 男「こんなに暗かったら、道が見えにくいよねぇ~。」

女性「・・・は、はぁ。」

 男「危ないよねぇ~。」

女性「は、はぁ・・・。」

 男「帰れなくなっちゃうよねぇ・・・。でも、これで大丈夫だから、ボク、行くね。」

ペタ・・・ペタ・・ペタ・・・

男、またシールを張りまくりながら、去って行った。

見えなくなっていく、男。





女性「・・・。あぁ!目印。」





女性「ホッ。」


女性、安心のため息をついたとたん、男が泣きながら猛スピードで戻ってきた。



男「暗すぎて、シール見えへん!」





女性「・・・アホ。」
  
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2008年10月24日

父の背中

深夜のボロアパート
暗がりの部屋から
光が漏れている
赤ん坊の泣き声が響く

赤ん坊を抱き抱える、父親

  父親 「お~、よしよし・・・お腹が空いたのかい?」

隣に住む、おばさんが壁をドン!と叩く
怒鳴り声

おばさん 「ちょっと、何時だと思ってんの!」
  父親 「す、すいません。」

父親、頬が痩せこけており、無精髭

父親の背中姿

父親 「すまねぇなぁ・・・。」
    「嫁にも逃げられて、お前には寂しい思いさせてしまってるなぁ。」

机の前で頭を抱える、父親
一生懸命、机に向かって取り組んでいる。

父親 「今夜中に何とか出さないと・・・。こいつの為にも。」




父親 「く、くそ・・・だ、駄目か・・・。」




父親 「このままでは餓死してしまう。」




父親 「もっと、強く捻りださないと、出ないか。」




父親 「く、くそ・・・だ、駄目だ。限界だ。」





父親 「すまぬ。息子よ・・・頑張ってはみたんだが・・・。」




父親 「やっぱり、わし、お乳出ぇへん。」
  
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2008年10月23日

日本一決定戦

将棋の盤の様な台の前に
向い合っている、名人2人

頭を抱えたり、相手の出方等を伺っている

実況 「大詰めを迎えております。相手の出方を伺って悩んでおります。」

時間を図っている女性

女性 「あと、1分30秒。」

名人の足元の横には、段ボール箱にスリッパの山

実況 「名人、どの様な出方をするのでしょうか?」
    「第122回全国スリッパ王決定戦、優勝はどちらの名人なのでしょうか?」

名人A、B、箱からおもむろにスリッパを取り出して、お互いの頭をハタく

名人A 「スリッパ!」
名人B 「スリッパ!」
名人A 「スリッパ!」

名人A、名人Bのスリッパを取り上げる
名人B、箱から新しいスリッパを取り出して、名人Aのスリッパをハタく
ハタき返す、名人A

名人B 「スリッパ!」
名人A 「スリッパ!」

無言になり、また、相手の出方を伺う名人2人

名人A 「・・・。」
名人B 「・・・。」

実況 「名人Aが一歩リードと言った感じですね。」

名人2人の応酬が始まる
名人2人、箱からどんどんスリッパを取り出して、お互いの頭をハタく

名人A 「スリッパ!」
名人B 「スリッパ!」
名人A 「スリッパ!」
名人B 「スリッパ!」

終了の秒読みをする、女性

女性 「あと3秒、2秒、1秒・・・。」
    「時間切れです。」

時間切れとなった瞬間、方々から人が「スリッパ!」と、叫びながら乱入して、名人が滅多打ち

乱入者 「スリッパ!」
乱入者 「スリッパ!」
乱入者 「スリッパ!」
乱入者 「スリッパ!」

F/O

実況 「あ・・・何も見えへん。」
  
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2008年10月21日

遠くへ

電車で街へ買い物に出掛けていた矢先の事だ。

ギュルッ。

変な音と突然襲い掛かってきた雷。

腹部を刺激した。

次に肛門をノックし出した。

ドン、ドン、ドン!

額からジワァッと出てくる、汗。

ガタン、ガタンと揺れが更に追い討ちをかける。

次の駅が見えてきた。

通過。

止まらない。

快速急行が一番速いと乗り込んだ、数十分前の自分を恨む。

気を紛らわせながら時を待つ。

急カーブを恨む。

途中下車。

変な日本語だが、ゆっくりと急ぎ足で便所を目指す。

洋式だ。

駅の便所にしては珍しいのか、今ではそうではないのか、そんな事はどうでもいい。

衣類を下ろし、腰を下ろす。

ガタン!

ピューッ~!

バリン!

便座がドアを破り、飛んでいった。

え?

とりあえず便座を追いかけた。

便座が無ければ、座れない。

用が足せない。

追いかけた。

空を舞う便座を。

改札を出て、街へ出た。

空中をゆっくりと飛んでいる。

追いかけなければ。

写メを撮っている奴がいる。

UFOとか言っている。

確かにU型してるけど、UFOではない。

あれは便座だ。

確認飛行物体だ。

途中下車で見知らぬ街中で便座を追いかけるなんて夢にも思わなかった。

いや、夢であって欲しい。

便座がゆっくりと不時着してきた。

チャンスとばかり思い切り走って、奪取した。

捕らえたのだ、我が手に便器を。

さぁ、心行くまで用が足せる。

辺りを見渡してみると、見知らぬ街、無我夢中で追いかけてきたばっかりに迷子になってしまった。

ここは、どこだ?

戻れないのか?

ふと、地面に目をやると茶色い斑点を見つけた。

気付くと、腹痛も治まっている。

追いかけている最中に全て出ていたのだ。

この目印を頼り後を追って行った。

この長い長い道のりをただ、ひたすら来た道を便座を抱えたまま引き返す。

斑点が消えた。

そう、ゴール。

顔をゆっくり上げると、目の前に広がってきたのは・・・

駅長の顔。

洋式便所にそっくりな駅長さん。

どうやらあまりの腹痛で気を失っていたらしい。

電車の中で汚物を漏らしてしまって、他のお客様に被害を齎したみたいだ。

「水に流そう。」

駅長の顔には怒りの表情は全く無く、許してくれてるみたいだ。

それどころか後の皆への弁解を考えていた。

「よう、仕切らんわ。」

洋式便所似の駅長。

この事は他言無用。黙っておく。

許しを得て、ホッ。と一息き、目的地へ向かった。

あくる日の朝、朝刊を見て驚いた。

事の全てが記事になっていたのだ。

事の全てを洩らされたのだった。
  
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2008年10月20日

固い話
































岩石!


















  
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もう秋だというのに・・・

いや、もう冬に近いといってもいいのに・・・

枕もとでワァンワァンワァン・・・

いつまで蚊おんねん。

パン!パン!パン!

逃げ足、いや、逃げ飛びの早い奴め。

パン!パン!パン!パン!

はぁ・・・はぁ、はぁ・・・。

パン!パン!パン!パン!パン!パン!

はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・














日本一周。
  
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